投資信託の基礎知識

投資マインドを育てるコラム “感情のワナ”にはまらない、賢い投資家へのステップ

  1. 第1回  大切なのは損に惑わされない心構え
  2. 第2回  「分かりやすい=リスクが小さい」とは限らない
  3. 第3回  保有している資産が下がった時、何を選べるか?
  4. 第4回  「今」と「これから」をシンプルに考え、保有し続けるなら前向きに
  5. 第5回  利益が出ている時の売りタイミング
  6. 第6回  「勝ち」を狙うより「負けない」意識にシフトする
  7. 第7回  逃した悔しさを長期投資のきっかけに
  8. 第8回  “続く投資”をはじめよう
はじめに

「いつかは投資を始めなくてはいけないのかな」と考える方は増えているようです。低金利、年金不安、将来のインフレへの備えなど、資産運用に取り組んだ方がいい理由はたくさんあります。資産運用に関する本も書店にずらりと並んでいます。

しかし「いつかはやらなくては」という事柄は、禁煙やダイエットのように、なかなか手がつけられないものと相場が決まっています。「今はデフレだから運用しなくても大丈夫」「まだ定年まで時間があるし」「自分は投資に向かないタイプだから」などと、できない理由を同じくらい並べてしまうのです。

これは怠け者だからなのではなく、人間として当然の感情の動きであることが分かっています。「現状維持バイアス」と呼ばれるもので、どうしても変化しなければならない状況がない限りは、人はこれまでのやり方や持ち物にこだわってしまいがちなのです。

このような感情の影響を研究しているのが行動経済学です。合理的に考えれば、より高いリターンが見込める資産が他にあるにもかかわらず、昔買った株式を持ち続けるということはないはずです。しかし人間には感情があるので、「いつか上がるかもしれないから」となかなか損切りできなかったりするのです。

これまで資産運用の世界では、「適切な知識と情報があれば、投資家はきちんと合理的な判断を行なうことができる」ことを前提としてきました。

しかし実際は、その時の気分や感情に一切左右されずに行動するというのは難しいものです。

行動経済学の研究によって、人間が起こしやすい判断の偏りのパターンがいくつか明らかになってきています。このパターンを学んでおけば、感情の罠にはまることなく、より合理的な選択ができるかもしれません。このコラムでは行動経済学の要素を取り入れながら、より望ましい資産運用のヒントをご紹介できればと考えています。

(参考)
友野典男(2006)「行動経済学」、光文社新書
マッテオ・モッテルリーニ(2008)「経済は感情で動く」、紀伊國屋書店 他