野村アセットマネジメント

社会的価値を生み出すインパクト投資

コラム第6回│
具体的な「社会的インパクト(社会的価値)」創出について①

第6回具体的な「社会的インパクト(社会的価値)」創出について①のイメージ

今回は、具体的な「社会的インパクト(社会的価値)」創出の例を見ていきたいと思います。

インパクトファンドにおいて「社会的インパクト」を計測する場合、投資先である企業は自社で創出したインパクトを集計し、公表された数値を運用会社が「社会的インパクト」として公表する、というプロセスを辿ります。下図は、ある日本企業における「社会的インパクト」の事例です。自社製品におけるプラスチック容器や包装用プラスチックを特定、プラスチックの削減量を推計し、公表しています。プラスチックの削減量は年々拡大しており、様々な製品におけるプラスチック量削減に対する取組みの成果が数値として示されており、累積的な効果も大きくなっていると考えられます。

当社運用戦略における個別企業KPIの例

当社運用戦略における個別企業KPIの例

(出所)対象企業のレポートより野村アセットマネジメント作成

※天然資源をもとに作られる原料

ただし、こうした集計は、企業側において追加的な時間や費用が発生することも認識しておく必要があります。そのコストを製品価格として転嫁できるかどうか、つまり消費者側に対しても、サステナブルな社会構築のための費用を受け入れることが求められるようになります。

例えば、業界トップ企業におけるプラスチック量削減への取組みは、広範囲に影響をもたらします。それは、トップ企業の取組みが業界全体へ波及するだけでなく、最終的に、消費者の家庭用品使用に関する意識をも変化させることになるからです。単年度のアウトカム(成果)(ご参照:第3回コラム)は小さいかもしれませんが、それが累積し、業界全体、消費者の購買行動へも波及することを勘案すれば、その「社会的インパクト」は非常に大きい結果をもたらすと言えます。もちろん、何処までを「社会的インパクト」として計測するのかという課題はありますが、継続的な取組みが大きな「社会的インパクト」をもたらすことは、こうした例からも明らかです。

また、台湾の半導体企業の事例も、「社会的インパクト」を考える上で参考になります。

例:米国の携帯電話企業が部品を供給するサプライヤーに対して、生産時における再生可能エネルギー(再エネ)の使用を求めているケース

サプライヤー企業の再エネ比率の引き上げは、温室効果ガス(GHG)の排出量を減少させますが、それは「社会的インパクト」として計測可能となることはお分かり頂けると思います。それにより、GHG排出量を継続的に減らし、パリ協定が目指す2℃目標※1への貢献を計測できます。

それに加えて、再エネ比率の引き上げに伴う付随効果は、どのようなものが考えられるでしょうか。

企業は再エネ比率を継続的に引き上げる必要に迫られており、結果として台湾の総電力発電に占める再エネ比率は大幅に上昇するだけではなく、再エネ事業の拡大に伴う他の企業による再エネ使用の拡大、既存の電力流通設備における管理体制など様々な形で波及効果が創出されていると考えられます。実際、それらすべての効果を企業の効果として計測することは難しいですが、総量としての「社会的インパクト」は非常に大きくなっているはずです。サステナブルな社会の構築は、ESGによる「有効需要」の創出により、アウトカムが累積的に積み重なることで供給サイドにおける変化をも生み出していると言えます。

※1 気候変動緩和策(地球温暖化の原因である温室効果ガスを削減する取組み)について、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃以内に抑えるという目標