資産運用で損失が出た時に押さえておきたいポイント

投資マインドを育てるコラム~やさしく学ぶ行動経済学~

投資についての難しさというものは、結局のところ「資産価格が上がったり下がったりした時に、果たして自分は正しい判断ができるのだろうか?」という問題に尽きるのではないでしょうか。

例えば保有する資産の価格が下がった時、行動としては下記の3つのパターンが考えられます。この3つのうち、どれをどのタイミングで選ぶかが重要となるのです。

(A)そのまま保有し続ける

(B)同じ資産を買い増して平均購入単価を下げる

(C)売ってしまい損失を確定する

この中で(C)を選ぶのは、なかなか難しいことのようです。なぜなら、自らの間違いを認めることになるからです。

ランチのメニューから住宅の購入まで、人は日々たくさんの判断をしています。しかし、それが「間違っていた」ことを認めるのは苦手です。失敗したかもしれないと思った瞬間から、自分の行動は正しかったという理由を無理やり考え、なんとか自分を納得させようとします。脳が記憶を作り替えてしまうことさえあるようです。
投資をする時も同じです。自分が保有している資産に対しては好意的なバイアスがかかりやすくなります。買った時より大幅に価格が下がっても、「これだけ下がったのだから、もう少しで上昇に転じるのではないか」などと考え、悪い情報が流れてきても、自分にとって好ましい情報や解釈ばかりを受け入れようとします。
そしていよいよ損失が大きくなり、売却を決心せざるを得なくなった時は、「もう二度と投資なんかやるものか」と、怒りを爆発させることになるのです。そうなると、資産も精神も大きなダメージを負ってしまいます。
このような感情の罠から抜け出すのは大変です。昔から、投資で一番難しいのが「損切り」だといわれています。上手に損切りできる人が投資で成功しているともいわれます。損切りを上手に行なっている人の中には、その時の感情に左右されないように、どのくらいの損失になったら損切りするかを予め決めておくという人も多いようです。
一方で、長期投資をする中では、投資した目的は何だったかを思い出してみましょう。投資の目的が変わらなければ逆に売る必要がない場合もあります。運用をしていると、資産価格の下落はつきものですが、成し遂げたい「目標」が明確で、「いつ」まで置いておくことができるかが分かっていれば、金融危機のような大きな下落局面においても投げ売りを防ぐことにも繋がり、状況によっては資金追加を行なう投資局面と捉えることができるかもしれません。