投資信託の基礎知識

投資マインドを育てるコラム “感情のワナ”にはまらない、賢い投資家へのステップ

「今」と「これから」をシンプルに考え、保有し続けるなら前向きに
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「シンプルライフ」や「断捨離」、あるいは「片づけ本」のブームは幾度となく繰り返されています。買った時に高かったもの、まだ使えそうなものを、「価値がなくなった」と判断するのは、誰にとっても勇気がいることのようです。一方で、溜め込んだモノを思い切って処分すると、長年のストレスから解放され、心地良いスッキリ感が得られると言います。

金融資産の場合でも、長年リターンを生み出していない資産について考える時は、同じような思いがあるでしょう。特に金融資産は、市場で値段がついているだけに、「買った時の半分以下の値段になった」、「3年前の高値の3分の1になった」などと、価値が大きく下がったことが目に見えます。その様子を見ているうちに、「全部売り払ってすっきりしたい!」などと考えてしまうこともあるのではないでしょうか。

購入した価格より少し下がったくらいでは、「環境が良くなれば戻るかもしれない」という期待を持ちつつ、値動きを見てしまいます。しかし価格が半分以下になり、どう考えても購入時の価格には戻らないと思うようになると、目をそむけてしまいたくなるというのが心情です。しかし、このような心の動きが、合理的な判断を遠ざけてしまうことがあるのです。

行動経済学において指摘される判断の歪みの一つに、「参照点の依存性」があります。人は「参照点からどのくらい変化したか」に敏感に反応する傾向があるというものです。

損失を抱えた資産を売って新たな資産に投資をし、半年後に10万円の収益が上がったとすると、私たちは10万円の収益をはっきりと認識できます。しかし、既に保有している資産が110万円の損失を抱えているとして、それが半年後に100万円の損失まで減ったとしても、「結局はまだ100万円の損があるからな・・・」とばかり思ってしまいがちなのです。前者は参照点が一旦リセットされていますが、後者は参照点が購入時の価格のままとなっているためです。

「資産の購入時の価格」を参照点とすることで、不合理な判断になってはいないでしょうか。あなたはその資産に「救いようのないダメな資産」というラベルを貼っているかもしれませんが、別の参照点から見てみれば違うかもしれません。金融資産にとって重要なのは、「これからリターンが期待できるかどうか」であることも思い出しましょう。

ここでもう一度、前回のコラムでもご提案した「自分がその資産を保有していなかったとしても、現時点で買いたいかどうか」という問いを投げかけて欲しいのです。参照点は資産の「今」です。購入時の価格から大きく下がったとしても、だからこそ妥当と思える価格になっているかもしれません。これからリターンが期待でき、別の資産に投資し直すよりも有利だと判断できるなら、保有し続けるというのも有効な選択肢となります。

保有し続けるという行動は同じでも、「価格が下がって売れない・・・」と後ろ向きの姿勢でいるとストレスがかかります。資産の「今」を認識し、「これから」をシンプルに考え、選ぶ時は前向きに選びとりましょう。そうすることで、次の投資行動も軽やかなものに変わってくるかもしれません。

(参考)
友野典男(2006)「行動経済学」、光文社新書
マッテオ・モッテルリーニ(2008)「経済は感情で動く」、紀伊國屋書店 他