投資信託の基礎知識

投資マインドを育てるコラム “感情のワナ”にはまらない、賢い投資家へのステップ

逃した悔しさを長期投資のきっかけに
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人の行動は、A)行動のきっかけ、B)行動、C)行動結果、という3ステップを踏みます。例えば、ラーメン屋さんの行列を見つけた(行動のきっかけ)、自分も行列に並んでラーメンを食べた(行動)、美味しかった(行動結果)という具合です。これは応用行動分析などで使われる理論です。

そして、3ステップのうち最も人の行動に影響するのは、行動結果だと言われています。食べたラーメンが非常に美味しければ、自然とまたラーメン屋さんに足が向くでしょうが、ラーメンが美味しくなかったら、ラーメン屋さんの行列を見つけても並ばなくなるでしょう。

これを投資に当てはめてみましょう。ある投資家にとって「相場が上昇している」という情報が行動のきっかけになったとします。多くの人が買っているという話を聞けば、自分も買いたくなるという人は多いようです。そして投資という行動を起こしたとします。

その結果、資産価格が上昇すれば(プラスの行動結果)、次も投資してみようと自然と考えます。しかし資産価格が下落してしまったら(マイナスの行動結果)、投資をする気は起きにくくなります。

そもそも「相場が上昇している」ことをきっかけに投資をすることは、冷静に考えればやや分が悪いことに気づくでしょう。既に上昇している資産価格がさらに上昇することも考えられますが、投資の基本は「安く買って高く売る」です。

しかし実際には、冷え込んでいる相場には参加しにくく、「安いうちに買っておけばよかった」などと思いながら相場の活況に注目してしまうということが多いのではないでしょうか。つまり心の動きに任せていると、価格が上昇した資産を買い、下落した資産を売るという、マイナスの行動結果が生まれやすい状況を作ってしまうのです。

では逆に、「安いうちに買うことができ、相場上昇の恩恵を受けた人」は誰なのかを考えてみましょう。予想を的中させて大儲けした人をイメージするかもしれませんが、100%相場を予見できる人がいたら世界中で話題になっていそうです。つまり実際には、タイミングを見て売買を繰り返している人というよりは、急騰のあるなしに関わらずコツコツと投資を続けてきた人が恩恵を受けられたのかもしれません。

リーマン・ショックや欧州債務危機は、金融市場を大きく動揺させました。分散投資をしたはずだったのに、すべての資産の価格が下がってしまったという投資家もいたでしょう。当時は、いずれ相場が上昇することを信じるのが難しい状況だったかもしれません。しかし、「相場の下落時は安く買える時」とコツコツ投資を継続していた人は、その後の上昇局面でリターンを享受することができました。

短期的な行動結果に反応しないというのは、非常に難しいことです。現代に暮らす私たちは、インターネットやゲームなどを見ても分かる通り、すぐ反応があることに慣れています。その中で、10年後、20年後、それより先に結果が出てくるような長期的な資産形成に取り組むというのは、揺らがない覚悟が必要となります。ただし自動積立サービスを使うなど、そのハードルを乗り越える工夫はできます。

相場の急騰を見て、「安いうちに買っておけばよかった」と悔しい思いをしたのなら、それを長期投資に取り組むきっかけとしてみてはいかがでしょうか。

(参考)
友野典男(2006)「行動経済学」、光文社新書
マッテオ・モッテルリーニ(2008)「経済は感情で動く」、紀伊國屋書店 他