責任投資への取組み

4.責任投資に係る各種原則への対応

1.日本版スチュワードシップ・コード

野村アセットマネジメント(以下、当社)は、「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫を受け入れることを、2014年5月に表明しました。また、2017年5月に改訂されたコードについても、2017年11月1日に受け入れを表明しております。同コードに対応する当社の考えや取組みは以下のとおりです(2018年2月28日現在)。

当社では、投資先企業の企業価値の向上と持続的成長を促す活動に継続的に取り組んでゆくとともに、活動の進捗や成果について定期的に自己評価を行い、公表することによって、改善を図り、よりよい活動に繋げてゆきます。当社は、インベストメント・チェーンの中の運用機関としての責務を深く理解し、投資先企業の持続的成長を促し、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図るために、スチュワードシップ責任を適切に果たしてまいります。

自己評価

【原則1】
機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、これを公表すべきである。

当社は、お客様から委託された資金を運用し、お客様の利益向上を目指す運用会社として、フィデューシャリー・デューティー(注1)を果たすため、以下の取組みを行っています。

  • お客様にとって最良のパフォーマンスを提供することを常に最優先の目的として、お客様からお預かりした資産の中長期的な成長を目指します。
  • スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コード(注2)の下、投資先企業との建設的な目的を持った対話(エンゲージメント)、議決権行使、ESG(注3)の考慮などを通じてスチュワードシップ責任を果たし、投資の好循環を実現してゆきます。投資の好循環により、「企業の稼ぐ力」と「国民の資産形成」の拡大及び健全で持続可能な社会の実現に取り組んでゆきます。
  • お客様と社会から深く信頼される運用会社として、資産運用ビジネスを通じて社会の発展に貢献してゆきます。
  1. (注1)「フィデューシャリー・デューティー」(Fiduciary Duty)とは、「顧客本位の業務運営」を行う義務を意味します。
  2. (注2)「コーポレートガバナンス・コード」とは、株式会社東京証券取引所が有価証券上場規程の別添として2015年6月1日付で定めたもので、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則が取りまとめられています。
  3. (注3)「ESG」とはEnvironment(環境)、Social(社会)及び(Corporate)Governance(企業統治)の総称です。当社は、ESG 課題を、企業が社会的責任や持続性の観点から取り組むべき事項として重要視しています。
【原則2】
機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たす上で管理すべき利益相反について、明確な方針を策定し、これを公表すべきである。

当社は、お客様の利益より当社を含むお客様以外の者の利益を優先させることによりお客様の利益が不当に損なわれる事態を防止する義務を負っています。そこで、当社は、利益相反のおそれのある取引等を適切に管理するため、「利益相反管理方針」を策定しています。スチュワードシップ活動に関する同方針の概要は以下の通りです。

(1)責任投資に特化した意思決定機関の設置

当社では、投資先企業及びその他諸機関等におけるESG課題に関する事項、エンゲージメント(注1)、議決権行使等に関する事項を責任ある機関投資家として考慮すべき事項と定め、責任投資に係る意思決定を行うため、責任投資委員会を設置しています。責任投資委員会の委員長は経営会議が指名し、審議の結果及び決定事項は経営会議に報告されています。委員は、利益相反の立場にある者又はそれを代弁する可能性のある者を除外し、原則として運用・調査に係る意思決定を行う者とし、委員会では投資先企業が企業価値の向上や持続的成長を実現できるよう議論し、意思決定を行っています。議決権行使において利益相反が生じ得る議案については、その事実を明らかにした上で、複数の議決権行使助言会社の意見を参考に、株主利益の観点から、責任投資委員会において議決権行使の判断を行っています。

(2)利益相反が生じ得る局面の特定

当社では、スチュワードシップ活動において重要な利益相反が生じ得る局面として、以下の議案に係る議決権行使を特定しています。

  • グループ関係会社並びにその他の野村ホールディングス株式会社の子会社及び関連会社の株主総会の議案
  • グループ関係会社が関わる案件(たとえば、グループ関係会社が財務アドバイザーを務めるM&A及びグループ関係会社が主幹事会社を務める有価証券の募集・売出し)に係る議案

「グループ関係会社」とは、野村ホールディングス株式会社及び野村グループに属して銀行業、金融商品取引業その他の金融業に従事する日本及び外国の会社(当社を除く。)であって、当社の利益相反管理統括責任者が利益相反管理の観点から管理対象に含める必要があると判断した会社のことです。

(3)独立した諮問会議による監視

業務執行から独立した機関として、取締役会の下に「責任投資諮問会議」を設けており、特に利益相反を伴う議決権行使等のスチュワードシップ活動については、利益相反によりお客様の利益が損なわれることなく責任投資委員会において意思決定が行われるよう監視する体制としています。監視機能を適切に果たすため、同会議は利益相反管理統括責任者と独立社外取締役のみによって構成されています。また、責任投資委員会には責任投資諮問会議のメンバーが陪席し、利益相反の観点から問題がある場合はその場で速やかに意見を述べることができるようにすることで、責任投資諮問会議がスチュワードシップ活動に係る利益相反を適切に監視し、未然に防止できる体制としています。責任投資諮問会議は、必要に応じて、経営会議又は責任投資委員会に改善を勧告し、その内容を取締役会に報告します。

(4)経営陣の取り組み

当社は、指名委員会等設置会社として経営の監督と執行を分離することで、ガバナンスの透明性を高めています。取締役会は、執行役による業務執行に対する監督機能を担っており、経営の独立性と監督の実効性を確保するために野村グループ外から独立社外取締役を複数選任しています。
当社の経営陣は、取締役会の監督の下、利益相反管理方針の策定や責任投資委員会の整備など、スチュワードシップ責任を果たすための取組みを積極的に推進しております。

  1. (注1)エンゲージメントとは、投資先企業との建設的な目的を持った対話のことです。
【原則3】
機関投資家は、投資先企業の持続的成長に向けてスチュワードシップ責任を適切に果たすため、当該企業の状況を的確に把握すべきである。

当社は、投資先企業の理解について、以下のとおり定めています。

  • 投資先企業の事業内容や事業環境、経営等について、深い理解に努めること
  • 企業のファンダメンタルズを調査・分析する際には、財務情報だけでなく、ESG課題への対応状況や背景にある戦略や哲学など非財務情報も対象とすること
  • 運用における投資判断、投資先企業とのエンゲージメント、議決権行使などのスチュワードシップ活動は、企業に関する深い理解に基づいて行うこと

当社では、上記を具現化するための体制整備に努めています。当社は、経験豊富かつ多様なアナリストを多数擁する独自のインハウス・リサーチ体制を有しています。加えて、2016年4月にはスチュワードシップ活動やESG調査等を専門的に担う責任投資調査部を設置しています。

当社におけるアナリストやESGスペシャリストの企業訪問調査やトップ・マネジメントとの面談は、年間延べ5,000回以上に及びます。当社には日本を代表する企業や次世代を担う成長企業のトップ・マネジメントの方々が多数訪問され、一方で企業訪問の際にはトップ・マネジメント自らご対応頂くケースも多くあります。これらのトップ・ミーティングを通じて企業の経営戦略や企業理念、リスクや収益機会等について把握しています。得られた情報に基づきアナリストやESGスペシャリストと運用担当者の間で活発な議論を行うことで、投資先企業の特徴を踏まえた実効的な状況の把握を行うとともに、企業価値を毀損するおそれのある事項についても早期に把握することに努めています。

【原則4】
機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである。

当社は、エンゲージメント(投資先企業との建設的な目的を持った対話)を、スチュワードシップ責任を果たすための有力な手段と考えており、エンゲージメントの基本的な姿勢を以下のように定め、これに積極的に取り組んでいます。

  1. ① 友好的かつ建設的な姿勢で対話に努めること
  2. ② 財務情報だけではなく、ESG課題への対応状況や背景にある戦略や哲学などの非財務情報の理解にも努めること
  3. ③ 資本の効率的利用に関する投資先企業の考え方を聞くとともに当社の考え方を伝えること
  4. ④ 重大な不祥事・事故などが生じた際には原因や再発防止策を聞き健全な経営を促すこと

エンゲージメントにおいては、望ましい経営のあり方を以下のように定めたうえで、公正かつ一貫した姿勢をもって働きかけを行います。

  1. ① 社会的責任への適切な取り組み
  2. ② 資本の効率的な活用による価値創造
  3. ③ コーポレートガバナンス機能の十分な発揮
  4. ④ 適切な情報開示と投資家との対話

エンゲージメントの対象となる企業は、アクティブ運用(注1)のみならずパッシブ運用(注2)も含め、当社がその株式を保有している企業の中から、重要性等を勘案して効率的なエンゲージメントができるよう、選定しています。

企業価値が毀損されるおそれがある企業に対しては、一層のエンゲージメントを通じて相互理解を目指し、改善に向けた働きかけを行います。なお、経営に課題を抱える企業に対して改善を要求することのみをエンゲージメントと考えるのではなく、望ましい経営を行っている企業に投資家としての支持を伝えることも、エンゲージメントにおける重要な要素であると考えています。

他の機関投資家等との協働(集団的エンゲージメント)については、投資先企業への働きかけの実効性を高める活動であると考え、適切に取り組むこととしますが、個別事案における協働については、運用における守秘義務も考慮し、慎重に判断します。

エンゲージメントに際しては、法人関係情報及びその示唆情報(注3)、又はそれに該当するおそれのある情報を受領する場合も考えられます。これらの情報を受領した場合は、法令・諸規則や社内ルール等に則って、適切にその情報を取り扱います。

  1. (注1)「アクティブ運用」とは、ベンチマークとなる市場インデックス(日経平均株価やTOPIXなど)を上回る運用成績をあげることを目標とする運用方法です。
  2. (注2)「パッシブ運用」とは、ベンチマークに連動する運用成績を目標とする運用手法です。
  3. (注3)「示唆情報」とは、法人関係情報の取得を示唆する情報のことです。

エンゲージメント

【原則5】
機関投資家は、議決権の行使と行使結果の公表について明確な方針を持つとともに、議決権行使の方針については、単に形式的な判断基準に留まるのではなく、投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう工夫すべきである。

当社は、お客様から委託された資金を運用し、お客様の利益向上をめざす運用会社として、フィデューシャリー・デューティーを負っており、原則としてすべての保有株式について議決権を行使しています。責任投資委員会は、「グローバルな議決権行使の基本方針」を定めており、さらに日本株式については、この基本方針に基づき、「日本企業に対する議決権行使基準」を定めています。責任投資委員会は、これらの基本方針と基準を定期的に見直し、公表します。当社は、議決権行使において、当社の負っている役割を全うし責任を果たすため、国内外の投資先企業に望ましい経営を促し、投資先企業が企業価値の向上と持続的成長を実現してゆくように、これらの基本方針と基準に則って、投資先企業に対し議決権を適切に行使します。
なお、当社では、議決権行使はエンゲージメントの一環と位置付けており、投資先企業の実態を踏まえた判断を行うよう努めています。

当社は、従来、日本株式に係る議決権の行使結果を、議案の主な種類ごとに整理・集計し、主要な賛否判断の理由とともに、当社のホームページにおいて「議決権行使結果」として公表しておりましたが、2017年1-3月の行使実績より、個別の投資先企業及び議案ごとの賛否判断の結果の公表、いわゆる「個別開示」も開始し、四半期ごとに更新しています。これによって、議決権の適切な行使についての可視性をさらに高めるよう、努めています。

なお、当社は、多様な論点を確認し、より適切な議決権行使を行う目的で、複数の議決権行使助言会社と契約し、それらの意見を取得しています。当社の責任投資委員会は、議決権行使の判断に当たって、助言会社の意見を参考にしますが、株主利益の観点から、議決権行使の基本方針に則って独自の判断を行っています。

当社では、議決権に係る権利確定日をまたぐ貸株取引を行う場合があります。貸株取引を行う際には議決権の確保に留意するなど、お客様の資産の中長期的な成長に資するよう配慮します。

議決権行使

【原則6】
機関投資家は、議決権の行使も含め、スチュワードシップ責任をどのように果たしているのかについて、原則として、顧客・受益者に対して定期的に報告を行うべきである。

当社は、情報開示やお客様への報告を通じて、説明責任を適切に果たしてゆきます。

議決権の行使結果については、議案の主な種類ごとに整理・集計して公表するだけでなく、個別の投資先企業及び議案ごとの賛否判断の結果の公表、いわゆる「個別開示」も開始し、四半期ごとに更新しています。また、エンゲージメントについては、①企業価値向上に向けた事業戦略などに関するもの、②安全管理やコンプライアンスなどに関するもの、③コーポレート・ガバナンス体制など議決権行使に関するもの、④ESG課題への取組みに関するもの、といったテーマ別に事例を公表しています。

議決権行使やエンゲージメントといったスチュワードシップ活動については記録を残し、計画的な実施に努めています。

【原則7】
機関投資家は、投資先企業の持続的成長に資するよう、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づき、当該企業との対話やスチュワードシップ活動に伴う判断を適切に行うための実力を備えるべきである。

当社で投資判断を行うアナリストや運用担当者は、ファンダメンタルズの調査・分析の一環として、投資先企業やその事業環境等の状況を的確に把握するため、投資先企業との対話を日々行っています。また、スチュワードシップ活動やESG調査等を専門的に担う「責任投資調査部」を設置し、スチュワードシップ活動を適切に推進するための人員の確保やアナリストや運用担当者との連携の強化を図っています。更にスチュワードシップ活動に関する社外の研究会等にも積極的に参加し、運用機関としてのスチュワードシップ責任を果たすための実力を備えるよう努めています。

当社の経営陣は、運用機関としてのスチュワードシップ責任を果たすため、適切な能力・経験を備え、自らがスチュワードシップ活動の実行に関して重要な役割・責務を担っていることを認識し、スチュワードシップ活動に関する課題に取り組んでいます。具体的には、野村グループ外から独立社外取締役を選任し、メンバーの過半数を独立社外取締役とする責任投資諮問会議を設置するなど、利益相反によりお客様の利益が損なわれることのないよう、運用会社としてのガバナンスの強化に努めてきました。さらに、適切に議決権を行使しているか否かについての可視性をさらに高める観点から、日本株式における議決権の行使結果を、個別の投資先企業及び議案ごとに公表する、いわゆる個別開示を、他社に先駆けて実施することを決断するなど、スチュワードシップ活動に積極的に取り組んでいます。

当社は、上記のスチュワードシップ活動や自らのガバナンス体制・利益相反管理等について、定期的に振り返り、自己評価を行い、お客様に説明するとともに、ホームページに開示しています。PDCAサイクル(注1)を確立し、よりよい取り組みを行うことで、運用機関としてのスチュワードシップ責任を果たし、投資先企業の持続的成長に貢献してまいります。

  1. (注1)「PDCAサイクル」とは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)を繰り返すことで、業務を改善していく手法です。

自己評価(2017年)(679KB)

日本版スチュワードシップ・コードに対する野村アセットマネジメントの取組み(619KB)