福田コメント

今、宇宙がアツい

宇宙は、摂氏マイナス273.15度の絶対零度に近い空間が大部分を占めますが、今、その宇宙がホットになってきています。地球温暖化と同じように、宇宙も温暖化しているなどと荒唐無稽なことを言おうとしているのではありません。もちろん、株式市場で宇宙関連銘柄は注目度を高めてきてはいるようですが、そういう話をしたいのでもありません。

近年、軍事、探査プロジェクト(経済開発)、宇宙物理学、いずれの分野においても、宇宙に対する人類の取り組みやその成果は長足の進歩を遂げており、移り気な株式市場における短期的な物色テーマの一つという扱いを超えて、宇宙に関する知識は今後誰にとってもますます"知っておくべき知識"となっていくことは必至だと思われます。そういう私も、宇宙が好きだという趣味程度の知識は持ち合わせてはいますが、とても専門家レベルの域には達していないことから、自分以外の人たちに説明をする役割を担うこの文章における記述に関して、不適切あるいは不十分な内容があるかもしれません。仮にそうであっても、ご容赦いただきたいと思います。

さて、まずは軍事面での宇宙に関する動きから見ておきましょう。米国は2019年、軍事力の定義を見直し、従来の陸・海・空・海兵隊の4軍(と沿岸警備隊)に新たに宇宙軍を加え、6軍体制としました。日本の自衛隊も同様に2020年、航空自衛隊宇宙作戦隊を発足させました。高高度を飛行する弾道ミサイルや大気圏など比較的低高度を飛ぶ巡航ミサイルに対し、日本の弾道ミサイル防衛(BMD)システムは、大気圏外で海上自衛隊のイージス艦発射のSM-3(Standard Missile-3)が主に弾道ミサイルを、大気圏内で航空自衛隊の地上発射のPAC-3(地対空誘導弾ペトリオット)が弾道・巡航ミサイルを迎撃することを前提に二段構えの防空体制を取っています(SM-3、PAC-3共に開発は米RTX社が主導)。しかしながら、不規則な軌道、なおかつ極超音速で滑空する弾道ミサイルによる飽和攻撃を十分に迎撃できるかどうかに対する懸念が高まってきており、一度大気圏外に出た弾道ミサイルが大気圏内に再突入する前の宇宙空間においてミサイルを撃ち落とす必要性が高まっています。"宇宙軍(米国)"、"宇宙作戦隊(日本)"の創設は、直接的にはこうした文脈で理解される必要があると思います。

さて次に、探査プロジェクト(経済)についてですが、最初に挙げなければならないのは国際有人月探査「アルテミス計画」でしょう。月は地球の重力によって潮汐ロックがかかっているため常に同じ面を地球に向けており、月の裏側についてはよく分かっていないことが多くあります。一説には、水やレアメタルに加え将来の核融合のエネルギー源として期待されるヘリウム3も月の裏側には豊富にあるという見方もあります。
また、NASA(米航空宇宙局)や起業家イーロン・マスク氏のSpaceX社が主導する有人火星探査プロジェクトもあります。しかしながら、火星へ有人飛行するのは人体にかかる負荷が大きすぎると思われ、現実味がないように私には感じられます。

また、地球外生命体の可能性を求めて、現在既に木星の衛星ガニメデ、エウロパなどに探査機が向かっています。一つが、ESA(欧州宇宙機関)が主導しJAXA(宇宙航空研究開発機構)も参加する、2023年4月打ち上げの「ジュース」、もう一つはNASAによる2024年10月打ち上げの「エウロパ・クリッパー」で、前者は2031年、後者は2030年に木星軌道に到達する予定です。ガリレオ衛星と呼ばれる4つの衛星のうち、ガニメデ、エウロパ、カリストは表面が氷で覆われていますが、その下には広大な海があると考えられており、木星の強力な潮汐力が引き起こす火山活動によって海底に熱水噴出孔ができ、そこに地球の深海のように生命が存在する可能性が指摘されています。
また、木星と同じ巨大ガス惑星で木星以上に数多くの衛星が見つかっているにもかかわらず、より遠方にあるため探査が遅れている土星の衛星についても、NASAによるタイタン探査ミッション「ドラゴンフライ」が2028年7月打ち上げ予定となっています。

最後に、宇宙物理学などのアカデミックな分野においての発展については、文字通り信じられないほどの大きな進歩が今世紀に入ってみられているように感じます。ごく最近では、主に可視光を観測対象とするハッブル宇宙望遠鏡の後継と位置付けられるJWST(James Webb Space Telescope)が2022年に稼働したことによって、赤外線による観測が飛躍的に発展し、注目を集めています。宇宙は、138億年前にビッグバンが起こると共に急激なインフレーションによって膨張し、今でも遠くの宇宙ほど急速に遠ざかっていると考えられています。JWSTは遠くの光が赤方偏移によって波長が長くなる性質を利用して、138億光年のかなたに迫る遠方宇宙の銀河が発した電磁波を観測することで、誕生後"わずか"数億年の大昔の宇宙を観測の対象にしようという試みであり、次々に遠方銀河の記録を塗り替える成果をあげています。
さらには、アインシュタインの一般相対性理論で予言されていたブラックホールが国際研究グループ・EHT(Event Horizon Telescope)によって写真として可視化されました。2020年のノーベル物理学賞がブラックホール研究の3氏に贈られたことは記憶に新しいですが、EHTによるブラックホールの可視化は、3氏の受賞の後押しになったのかもしれません。ブラックホール好きな私は、興奮のあまり自分の個人用スマホの待ち受け画面を、おとめ座銀河団の中心M87銀河の超大質量ブラックホール(太陽質量の約65億倍!)と太陽系がある天の川銀河の「いて座A*」(太陽質量の約400万倍)の写真にしているくらいです。

EHTが取得したM87中心ブラックホールのブラックホールシャドウ。スケールバーは50マイクロ秒角(7200万分の1度)、明るさは輝度温度(単位は109K)(クレジット:EHT Collaboration)EHTが取得したM87中心ブラックホールのブラックホールシャドウ。スケールバーは50マイクロ秒角(7200万分の1度)、明るさは輝度温度(単位は109K)(クレジット:EHT Collaboration)

電波で捉えられた超大質量ブラックホール「いて座A*」(クレジット: EHT Collaboration)電波で捉えられた超大質量ブラックホール「いて座A*」(クレジット: EHT Collaboration)

それから、特に重要なのが、重力波の観測に成功したことです。2015年9月、米国の重力波観測装置LIGOは人類史上初めて、2つのブラックホールの合体によって発生した重力波の検出に成功しました。それにより、アインシュタインが一般相対性理論で予言していた重力波が実在することが証明されました。ブラックホールはこれまで存在することはわかっていても、あまりにも巨大な重力によって光さえもそこから脱出できないため、望遠鏡のような電磁波を使って観測する技術では限界がありました。その壁が、重力波の観測に成功したことで、取り払われたわけで、2017年のノーベル物理学賞がこの重力波検出に与えられたことは当然の帰結と物理学者の誰もが考えたようです。

そして実際に2017年8月には、中性子星同士の合体で生じた重力波が検出されました。このイベントでは、ガンマ線バーストが観測で捉えられ、可視光、赤外線、電波、エックス線などの電磁波のスペクトラム分析により、金やプラチナなどの鉄より重い元素は中性子星の合体によって生成されたとの説が観測によって初めて裏付けられました。恒星が核融合反応によってエネルギーを生成する際、軽い元素から順に最初は水素、次いでヘリウムをエネルギーとするのですが次第に燃料が尽き、そして最後に鉄が生成された時点で核融合反応が停止することから、自然界に存在する鉄より重い元素がどのように生成されたのかについてはよく分かっていませんでした。それがこのイベントで、重力波に加えて、様々な光の観測、スペクトラム分析を行うことで、宇宙理解が前進しました。
これこそまさに、マルチメッセンジャー天文学時代の幕開けとなりました。

以上見てきたように、観測技術の進歩は人類の宇宙に対する理解を大きく発展させました。しかし、我々の知っている原子からなる物質(身のまわりにある通常の物質で、宇宙論ではこれをバリオンと呼ぶことが多い)は、宇宙の全エネルギー密度のわずか5%以下でしかなく、ダークマターはその5倍以上の27%、ダークエネルギーは約3分の2(約70%)もあると考えられています。つまり、人類の宇宙理解はいまだ全体の5%以下に満たず、まだまだ膨大なフロンティアが残されていると言えるでしょう。せっかく株式に長期投資を行なうのであれば、このくらいのスケールで大きく考えてみることもたまには必要かもしれません。

私は、厳しい環境の時ほど、できるだけ遠くを見るようにしています。

・本投稿は、特定銘柄の売買などの推奨、また価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。

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