福田コメント
お客様(受益者)の声
映画「男はつらいよ」で、「お客様の声をお聞かせください」と貼り紙があるご意見箱を見た寅さんが、突然、箱に向かって大きな声で話し始めるシーンがあって、私は大笑いしたのを覚えています(検索したら、志穂美悦子さんがマドンナ役、長渕剛さんも出演した、第37作「幸福の青い鳥」と判明)。お客様の声というものは、声の主が寅さんであろうとなかろうと、ファンド・マネージャーにとっても非常に重要であると私は考えています。金融業界というものは洋の東西を問わず、ともすれば、お客様以上に当局や業界内の内輪の"声"を重視しがちであると思いますし、日本の投資信託に限定してみてもその傾向は否定できないと思います。
もちろん、お客様の声は重要ですが、全てを受け入れるわけにはいきません。例えば、日本ではとかくアクティブ運用を行なうファンドの信託報酬率が高過ぎるとする"声"が目立ちますが、投資信託の信託報酬率の在り方(水準や配分)には様々な意見が存在し、運用者の立場からすれば、受けたサービスには対価が伴う原則に基づくと、運用の付加価値やコストに応じた信託報酬は認めていただかなければ運用自体が困難になってしまいます。だからといって、「金融サービスはタダじゃない」と言い張ったり、情報の非対称性は金融機関の収益の源泉だと開き直ったりするばかりでは建設的な態度とは言えません。
そこで、私なりの当然の努力として、毎日"お客様の声に耳を傾ける"ための時間を設けています。当社には、お客様の声をお受けする「サポートダイヤル」という部署があり、どのようなお客様の声があり、それにどうお答えしたのか、担当者が記録を残しています。私は、前日に残されたその記録を翌日の午前中のうちに目を通し、自分が運用するファンドに直接関係する"声"については、抜き出して保存することを日課としています。
これを始めたのが2022年10月、まだ3年の蓄積しかないこともあり、"声"に耳を傾けることで何かが生まれた、何かが変わった、と言えるところまでは正直、至ってはおりません。投資信託のファンド・マネージャーという仕事は、市場や投資先企業と向き合うことは多いものの、最終投資家(受益者)、アセット・オーナーと直接向き合うことは必ずしも多くありません。それを補うために、日課としてこれを続けていくことはファンド・マネージャーとしての私の土台であり、判断に迷った時に立ち返ることができる、決して揺るがない運用プロセスの一種の規律の役割を果たしてくれるだろうと期待しています。