野村アセットマネジメント 退職後の資産運用と資産活用

定年後に慌てないための準備~老人ホーム費用を見える化する~

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長寿化が進み、「100歳まで生きるかもしれない時代」が現実味を帯びてきました。これは不安材料である一方、人生を長く楽しめる時間が増えるとも言えるのではないでしょうか。しかし、元気で暮らせるうちはよいものの、介護は避けられない課題です。特に「老人ホームをどう選ぶか」「それに必要なお金をどう準備するか」は、悩ましい問題です。このコラムでは、老人ホームの種類と費用を把握したうえで、親が老人ホームに入る具体的な資金シミュレーションを参考にして、自分自身のケースを想定し、整理します。将来を不安に思うよりも、仕組みを知って、将来のために安心の選択肢を増やすことをお伝えします。

1. 老人ホームに入るきっかけ

「老人ホームに入るのは、要介護度がかなり重くなってから」と思われがちですが、実際には要介護1など比較的早い段階で入居が始まっているケースも少なくありません。調査(LIFULL senior「介護施設入居に関する実態調査」(2020年)では、入居時の年齢は80代が最多、要介護度は要介護1が最多、入居者の約8割に認知症の症状があり、約4割が入居時に何らかの医療行為を受けていました。

被介護者の施設入居前の状況のイメージ

2. 老人ホームの種類と費用

老人ホーム・介護施設は、サービス内容や仕組みが異なります。特に費用が重要になりますので、以下の4点を抑えておきましょう。

  • ・「初期費用(入居一時金)」
  • ・「月額費用(家賃相当、管理費、食費など)」
  • ・「介護・医療の自己負担」
  • ・「臨時費用(オプションサービスなど)」

初期費用(入居一時金)を多く払って、月額費用を抑える方法や、逆に初期費用をゼロにして月額費用の負担を大きくするなど、選択肢は施設により様々です。預貯金や年金額とのバランスを踏まえて選択するのがよいでしょう。

老人ホーム・介護施設の費用と特徴

2026年2月時点

種別 初期費用 月額 入居条件 特徴
民間 介護付き有料老人ホーム 0~数千万円 15~35万円 要介護1~ 介護等のサービスが付いた高齢者向け居住施設
住宅型有料老人ホーム 0~数千万円 15~35万円 自立~ 生活支援等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設
グループホーム 0~数百万円 15~30万円 要支援2~ 認知症の高齢者に対して、共同生活を送りながら介護や機能訓練を受けられるホーム
サービス付き高齢者向け住宅 0~数十万円 10~30万円 自立~ 少なくとも安否確認・生活相談サービスを提供するバリアフリーの高齢者向け住まい
シニア向け分譲マンション 数千万~数億円 数十万円 自立~要支援2 自立あるいは要支援の高齢者対象にしたバリアフリーの分譲マンション
公的 特別養護老人ホーム 0円 6~15万円 要介護3~ 要介護高齢者のための生活施設
介護老人保健施設 0円 9~20万円 要介護1~ 要介護高齢者が病院退院後にリハビリ等で在宅復帰を目指す施設
介護医療院 0円 10~20万円 要介護1~ 要介護高齢者の長期療養・生活のための施設
ケアハウス(介護型) 0~数百万円 7~20万円 要介護1~ 60歳以上で、自宅での自立した生活に不安がある方を対象とした施設

3. 親の老人ホーム費用の見える化

【シミュレーション 親(85歳・ひとり)のケース】
ここでは、85歳のひとり暮らしの親が、介護付き有料老人ホームへ入居し、100歳までの15年間生活するケースを想定して、必要費用と資金見通しを紹介します。

項目 内容
想定する親の状況 想定する親の状況 85歳(ひとり暮らし)
介護状況 要介護1
持ち家の有無 有り
現在の金融資産 預貯金1,000万円
老人ホーム 入居先 介護付き有料老人ホーム
想定する生活期間 85歳~100歳(15年間)
施設の月額費用 20万円
追加支出(例:日用品など) 3万円/月
月額費用合計 23万円/月

まず、施設にかかる毎月の費用を整理します。希望する施設は介護付き有料老人ホームで、月額費用が20万円の施設を選ぶものとします。さらに、施設の月額費用以外にも日用品代などの追加支出が発生することを想定し、毎月3万円を別途見込みます。したがって、月額費用の合計は23万円となります。

仮に100歳までの15年間(180ヵ月)入居すると、施設費用の総額は「23万円×180ヵ月=4,140万円」となります。

次に入居期間中に見込める資金として、年金と預貯金を確認します。年金は月15万円(※1)を受給すると想定し、15年間では「15万円×12回×15年=2,700万円」です。預貯金は1,000万円あるとすると、年金と預貯金の合計は3,700万円になります。
この結果、施設費用総額4,140万円に対して、年金と預貯金だけでは、「4,140万円-3,700万円=440万円」不足する計算になります。

そこで、不足分を補う手段として、家族からの支援等様々ありますが、ここでは自宅を売却した場合を仮定します。自宅を2,000万円(手取りベース)で売却できる見込みがある場合、売却代金で不足分の440万円を補填することが可能です。仮に売却代金を全額介護費用に充てられる前提で計算すると、「2,000万円-440万円=1,560万円」が残ります。予備費として余裕が生まれる可能性があります。
実際には、自宅売却時の仲介手数料や税金等の費用も考慮する必要があります。ただし、自宅を売却できる場合は、資金面でも選択肢が大きく広がり、介護の計画を立てやすくなることがわかります。

4. 将来の老人ホーム入居に備える資金準備

それでは、自分が将来老人ホームに入居する場合を想定して、必要な資金をどのように準備するかという考え方を示します

① 公的年金で土台を作る

年金は老後の生活の中心になるため、資金計画を立てるうえでの基本となります。
年金額と施設費の考え方が重要なポイントとなるため、まずは「ねんきん定期便」で将来の年金の見込額を確認してみましょう。

例えば、企業年金を含めた公的年金等が月20万円支給され、月の施設費が18万円の場合、その差額2万円は日用品などの追加費用に充てることができます。逆に、施設費が25万円の場合は、不足額の5万円を預貯金などから取り崩す必要があります。また、入居一時金や医療費は年金だけでは賄いにくいことが多く、預貯金から取り崩しが必要になるケースもあります。

② 預貯金で準備資金の土台を確保し、余裕資金は資産運用で育てる

老人ホームの入居一時金や月額費用はまとまった支出になりやすいため、まずはそれらを踏まえて「最低限確保しておきたい資金」を預貯金で準備することが大切です。そのうえで、老人ホームに入居するまでの期間を味方につけ、余裕資金については資産運用を活用し、お金にも働いてもらうことで将来の負担を軽減する選択肢が広がります。また、持ち家がある場合は、自宅の売却によって入居一時金や月々の不足分を補う方法も選択でき、資金の柔軟性を高められます。

「100歳まで生きるかもしれない時代」に「100歳まで安心できるお金」を見積もることは簡単ではありません。だからこそ、情報収集や資産の見える化、お金に働いてもらうなどを通じて、早めの準備を進めることが大切です。そうした備えは、漠然とした不安を減らし、将来の安心につながることでしょう。

記載の内容は、コラム制作時点(2026年2月)のものです。
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