国際分散投資の意義~GPIFのポートフォリオから学ぶ~

日本や米国のような先進国では、経済成長のベースである実質GDP(国内総生産)の50~70%程度を個人消費が占めます。人口が増加すれば消費が増え、それに伴いGDPは拡大します。
当面、世界の人口は増え続けますが、それ以上に注目すべきは技術革新です。例えば21世紀に入り、インターネットが普及したことで、情報の獲得やコミュニケーションが飛躍的に便利になり、社会や経済に大きな影響を与えました。その結果、私たちの生活水準は向上し、経済成長に繋がりました。今後は、AI(人工知能)技術の進歩が、革新的なサービスを提供すると期待されており、それ以外にも様々な分野で、経済成長に資する技術革新が進むでしょう。
過去30年の世界の実質経済成長率の平均は、約3.5%※でした。この経済成長は、投資のリターンに大きく影響を与えるものであり、投資の成果は経済成長の果実と捉えることができます。こうした世界経済の成長を効率的に取り込む手段として、「国際分散投資」が効果的であると考えられます。成長のエンジンである株式においては、時代を牽引するグローバル企業を組み入れ、加えて債券も併せ持つことで、リスク低減を図りながらインカム収入を長期で積み上げることが期待できます。
実は、私たちの身近にその事例があります。現役世代が納めた年金保険料のうち、年金の支払いに充てられなかったお金を年金積立金として預かり、将来世代のために運用している「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」です。

- (出所)年金積立金管理運用独立行政法人HP(https://www.gpif.go.jp)より
「GPIF」から学ぶべきポイントは「分散投資」だと思います。具体的には三点あります。
- ① 短期的な市場の動向により資産構成割合を変更するよりも、基本となる資産構成割合を決めて長期間維持していくほうが、効率的で良い結果をもたらすという理念を基に運用されている。
- ② 2025年度は、年率、名目賃金上昇率+1.9%のリターンを最低限のリスクで確保することを目標とし、基本資産配分(ポートフォリオ)が定められている。資産配分は、各資産の期待収益率やリスクを考慮した上で決定している。
- ③ 2001/4~2024/12の実績において、収益がマイナスになった年度も散見されるが、累積収益率は年率4.4%と安定したリターンになっている。

- (出所)GPIFウェブサイト(https://www.gpif.go.jp)を基に野村アセットマネジメント作成
以上、リスクを抑えた安定的な運用を実践している「GPIF」ですが、過去の実績を見る限り、日本が抱える経済構造の変化(低成長、相対的な低金利、インフレ)への備えができています。リタイアメント世代の資産運用においても、学ぶべきことが多いのではないでしょうか。
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- IMF「World Economic Outlook, April 2025 (https://www.imf.org/)」より野村アセットマネジメント作成
- 記載の内容は、制作時点(2025年9月)のものです。
- 記載事項・見解は、全て作成時点で当社が知り得る情報に基づくものです。