使いながら運用する[1]

リタイア後のお金、どう使う?
現役時代に知っておきたい資金計画

老後資金を準備することも大切ですが、同じくらい重要なのが「準備した資金をいかに上手に使うか」です。多くの方が抱える「将来、思わぬ出費があったらどうしよう」という漠然とした不安を解消し、安心して人生後半を楽しむための具体的なステップを解説します。

生活の安心を守る「確保しておきたいお金」を明確にする

リタイア後の安心を手に入れる第一歩は、あらかじめ「生活防衛資金」などの「確保しておきたいお金」を整理し、日々の生活で「使ってよいお金」との線引きを明確にすることです。

突発的な支出に備える「生活防衛資金」

「生活防衛資金」は、一般的に生活費の3ヵ月分〜1年分が目安*とされています。
例えば、月々の生活費が30万円の場合、90〜360万円程度が目安です。

*(出所)日本FP協会HP(https://www.jafp.or.jp/)

リタイア後は、以下のような突発的な支出が家計に大きな影響を与える可能性があります。

  • 病気や事故などに伴う想定外の医療費
  • 急な自宅の修繕費
  • 家電の故障による買い替え費用 など

これらは一度にまとまった金額が必要になるため、預貯金など「安全性が高く、すぐに使える資産」として確保しておくことが大切です。

運用資産を守るための「予備資金」

取り崩し資産を株式や投資信託で運用をしている場合、急落時に運用資産を売却しなくても済むよう、別途「予備資金」を用意しましょう。

市場の調整局面は1〜2年で回復することが多いですが、過去のITバブル崩壊やリーマン・ショックなど回復に5〜6年を要したこともあります。そのため、年金だけでは足りない「生活費の不足分」を通常で2年分、心配な場合は5年分を預貯金で持っておくと、価格が下がったときに資産を売らずに済み、心の余裕に繋がります。
例えば、月々の生活費の不足分が5万円なら、120〜300万円が「予備資金」の目安です。

家族への思いやりとして「最後の支出」を準備する

もう一つ整理しておきたいのが「葬儀・お墓」の費用です。自分の最期のことを考えるのは気が重いものですが、家族の経済的・精神的な負担を減らすための大切な準備です。

近年、葬儀やお墓の形は多様化しており、選択によって費用は大きく異なります。まずは「自分がどうして欲しいか」を決め、家族とすり合わせることで、必要なおおよその金額が見えてきます。

葬儀費用の目安

種類 費用の総額(平均) 葬儀の形式
一般葬 161.3万円 通夜・葬儀・告別式のあるお葬式で、参列者は家族・親族に加え、友人・知人、地域の方、職場の方など幅広い
家族葬 105.7万円 通夜・葬儀・告別式のあるお葬式で、参列者は家族・親族や近親者(一部の友人・知人のみ)
一日葬 87.5万円 通夜がなく告別式のみを1日で行うお葬式
直葬・
火葬式
42.8万円 宗教儀礼を大幅に省き、火葬のみ行うお葬式

お墓費用の目安

種類 費用の総額(平均) お墓の形式
一般墓 155.7万円 墓地に区画を設けて設置する墓石型のお墓
樹木葬 67.8万円 墓域内を樹木や草花で飾ったお墓
(自然葬、樹林墓地なども含む)
納骨堂 79.3万円 主に室内にある棚式やロッカー式のお墓

その他、合祀墓・合葬墓(複数の遺骨をひとつのお墓に埋葬し、その墓所の管理、運営者が遺族に代わって永代にわたって供養をするお墓)や、散骨・手元供養などがあります。

(出所)鎌倉新書「第6回お葬式に関する全国調査(2024年)」、「第16回お墓の消費者全国実態調査(2025年)」のデータを基に野村アセットマネジメント作成

例えば「家族葬+一般墓」を希望する場合、合計で約260万円が必要になります。これらの費用を安全性の高い資産で確保しておくことは、残される家族への「最後の思いやり」といえるでしょう。

「何歳まで使うか」というゴールを決める

資産を計画的に取り崩すためには、「何歳まで使うか」というゴールを決める必要があります。ゴールが決まれば「毎年いくら使えるか」が明確になり、使い過ぎの不安を和らげ、必要以上の節約を防ぐこともできます。

ここで注意したいのが、基準を「平均寿命」だけに頼らないことです。令和6年時点の平均寿命は男性81.35歳、女性87.33歳ですが、これはあくまで平均の値であり、多くの方がこの年齢を超えて長生きします。

<該当年齢まで生きる確率>
90歳まで:男性 約27%(4人に1人)、女性 約51%(2人に1人)
95歳まで:男性 約10%(10人に1人)、女性 約26%(4人に1人)

(出所)厚生労働省「令和7年簡易生命表」(https://www.mhlw.go.jp/)

長生きは喜ばしいことですが、その分だけ資金も必要になります。資金不足のリスクを抑え、安心して使うためには、例えば90~95歳くらいまでを見据えて計画を立てるのが現実的です。

安心は「金額」ではなく、「設計」から生まれる

リタイア後の安心感は、単に「いくら持っているか」という金額の多寡だけで決まるものではありません。本当に大切なのは、「資産をどう設計し、どう使うか」です。

「確保しておきたいお金」を整理し、「何歳まで」というゴールが決まれば、残りの資金は「安心して使えるお金」になります。守るべきものはしっかり守り、使うべきときにはためらわずに使う。このバランスこそが、豊かな老後を実現するための第一歩となるはずです。

(2026年9月作成)

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