日本×アメリカ比較編

歴史から学ぶ資産運用

2人のおじいちゃんにインタビュー!日本×アメリカ比較編

日々、様々なニュースが市場環境に影響を与えています。過去の出来事が市場にどのような影響を与えてきたのか、歴史を知ることで、資産運用のヒントになるかもしれません。
日本人とアメリカ人の両親から生まれた「私」は、日本とアメリカに住む祖父がいます。日本人の祖父には日本の歴史、アメリカ人の祖父にはアメリカの歴史、それぞれに話を聞いた結果、日本とアメリカの資産形成の違いについて比べてみました。

登場人物

  • 私:18歳(2005年生まれ)

    私:18歳(2005年生まれ)

  • アメリカ人のおじいちゃん:73歳(1950年生まれ)

    アメリカ人のおじいちゃん:73歳(1950年生まれ)

  • 日本人のおじいちゃん:73歳(1950年生まれ)

    日本人のおじいちゃん:73歳(1950年生まれ)

日本とアメリカの金融資産の違いを比較

日経平均株価とニューヨークダウ平均株価のパフォーマンス推移

期間:1969年12月末~2023年12月末、月次

日経平均株価とニューヨークダウ平均株価のパフォーマンス推移の図

*1969年12月末を100として指数化

(出所)ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成

アメリカのおじいちゃんに今から投資信託を使って資産運用をしてみてもいいんじゃないかっていうアドバイスをもらったけど、初めてだしどんなことから考えていけばいいんだろう?まずは2人のおじいちゃんがどうやって資産形成をしていたのか聞きたいな。
僕は預金や保険が中心だったなぁ。1980年代のバブルの時は少し株式を持っていたけど、それらを売ってからは特に何も投資はしなかったな。
僕はすぐに使う予定のないお金は基本的には投資信託や株式で運用していたよ。日本とアメリカの個人金融資産の比率を比較すると、現金・預金と株式・投資信託の比率がほぼ逆だよね。実際、僕もアメリカの比率に近い資産配分だったよ。

個人の金融資産比率

(2023年3月末時点)

日本

個人の金融資産比率 日本の図

米国

個人の金融資産比率 米国の図

*四捨五入により、各内訳の合計が100%とならない場合があります。

(出所)日本銀行()のデータを基に野村アセットマネジメント作成

ほんとだ!日本は資産の半分以上が現金・預金で、株式・投資信託は15%くらいなんだ。アメリカはほぼ反対の比率で保有しているなんてびっくり。
そうだね。そういった違いもあって、過去20年でアメリカの個人金融資産は約3.3倍になっているのに対し、日本は約1.5倍なんだ。そのうち運用によるリターンは、アメリカが約2.4倍に対し、日本は1.2倍程度なんだよ。※1

※12002年~2022年。個人金融資産は現金・預金、債券、株式等。運用によるリターンは資産価格の変動による伸びから算出しており、利子や配当の受取りを含みません。

(出所)金融庁「成長と資産所得の好循環・資産運用立国の実現に向けて(2023年12月1日)」(

超低金利の日本の預貯金に置いていたらリターンは限られるよね。なんで株式や投資信託に投資している割合が日本とアメリカでこんなに違うんだろう?
アメリカは小さい頃から学校などで金融教育が行なわれているんだよ。学校の授業以外にも、夏に子供たちがレモネードを販売する屋台を作って、実際に営業を行なう取り組みなどがあるよ。自分たちで製造から販売までオリジナルのアイデアを活かしてお小遣いを得るんだ。大事なのは、そのお金を何に使うのか、貯めるのかを考えるきっかけとなっていること。子供たちにとってビジネスを学ぶ機会となっているんじゃないかな。
日本にはなかなかない文化だね。子供の頃にそんな経験をしていたら、大人になった時に起業して自分のアイデアでチャレンジしてみようと思えるかもしれないね。日本でも高校の授業で金融教育が必修になったし、これからの若い子たちはもっと投資などを身近に感じられるように変わっていくのかもね。
あとは、アメリカは投資に対する制度が早くから整っていたのも大きいかもしれない。1975年には株式の売買手数料は自由化されていたし、401kやIRA(個人退職年金)の制度が整って、1980年代以降普及していった。給与天引きや所得控除の対象になったりして、気が付いたら効率的に投資をしているような仕組み作りがされていた気がするね。
だからアメリカは投資割合が高いんだね。日本の確定拠出年金制度は2001年から始まったからかなり遅れていたんだな。僕は、金融教育を受けていたわけではないし、株式を持つ人は安い時に買って高い時に売るという売買を頻繁にするものだというイメージがあって、僕みたいな素人にはそんなタイミングを見た売買は難しいと思ったんだ。どの株式を買ったらいいかも分からなかったしね。それに1990年頃までは日本の金利が高かったから、預金に置いておけば増えていた感覚もあったんだ。

日本の金利の推移(定期預金/1年)

期間:1970年12月末~2023年12月末、月次

日本の金利の推移(定期預金/1年)の図

(出所)野村総合研究所SuperFocus、日本銀行()のデータを基に野村アセットマネジメント作成

1970年末は年5.75%だった金利が、現在は0.005%にまで下がっているね。
1970年末に100万円を定期預金に預けていたら、20年後の1990年末には約293万円になっていたんだよ。※2

※2定期預金/1年。利息を複利とした場合。(出所)野村総合研究所SuperFocus

日本のおじいちゃんが若い時は預金だけで3倍近く資産形成ができていたんだ!それならリスクをとった株式に投資しなくてもいいって思ってしまうかも。でも、今の日本は超低金利だから、預金だけでは昔のように資産を成長させることは難しそうだね。
リスク資産である株式に投資をする場合は、「時間分散」も大事だと思っているよ。時間分散というのはつみたて投資などの手法を使って買う時期を分散させることだね。日本株式を見てみても、1980年代のバブルピークの高値から日経平均株価でつみたて投資を始めていたとしたら、途中投資額を下回る期間もあったけど、どんな時も継続して投資を続けることによって、資産を成長させることができていたんだよ。

バブルのピーク(1989年12月末)から日本株式に
毎月5万円ずつつみたて投資を行なったシミュレーション

期間:1989年12月末~2023年12月末

バブルのピーク(1989年12月末)から日本株式に毎月5万円ずつつみたて投資を行なったシミュレーションの図

(使用した指数)「日本株式」日経平均株価

上記はシミュレーションであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。算出過程で取引コスト等は考慮しておりません。市場指数そのものに投資することはできません。基準価額=日経平均株価と仮定し、当初元本1口=1円として口数を計算しています。ファンドの運用実績ではありません。

(出所)ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成

日経平均株価はようやくバブル時の水準になってきたから、その時に投資をしていた人からすると、やっと元に戻ったという感覚かもしれないけど、つみたて投資という方法だったら、資産が2倍以上に成長できていたんだね。僕は定期預金も株式もまとまったお金ができた時に一気に資金を移すということが多くて、つみたて投資という方法を実践することがなかったなあ。
株式は預貯金や債券とはリスクの大きさが違うから、投資の手法もリスクに合わせて考える必要があるだろうね。つみたて投資は、特に若い子にはおすすめの投資手法だと思うよ。日本だと月1万円程度から始めることができるみたいだしね。
私みたいにまとまったお金がない人でも少しずつ始めることができるね。
投資対象は日本の株式だけではないこともポイントじゃないかな。例えば、日経平均株価とニューヨークダウ平均株価を比べても、長期の株価の動きは全然違っていたよね。
日本は1980年代のバブルの頃に記録した日経平均株価の最高値を30年以上かけてようやく更新したと話題になっているけど、アメリカの株価はいろいろなショックを乗り越えながらも長期的には右肩上がりに成長していたよね。
そうだね。例えば同じ条件で、ニューヨークダウ平均株価に毎月5万円ずつ1989年12月末の日本のバブルのピークからつみたて投資を行なっていたとしよう。投資総額2,045万円に対して約9,173万円の資産を形成することができたんだよ。

日本のバブルのピーク(1989年12月末)から米国株式に
毎月5万円ずつつみたて投資を行なったシミュレーション

期間:1989年12月末~2023年12月末

日本のバブルのピーク(1989年12月末)から米国株式に毎月5万円ずつつみたて投資を行なったシミュレーションの図

(使用した指数)「米国株式」ニューヨークダウ平均株価

上記はシミュレーションであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。算出過程で取引コスト等は考慮しておりません。市場指数そのものに投資することはできません。基準価額=ニューヨークダウ平均株価と仮定し、当初元本1口=1円として口数を計算しています。ファンドの運用実績ではありません。

(出所)ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成

同じ期間に米国株式に投資をしていたら、投資額の4倍以上に資産を成長させることができたんだね。
僕は、投資する目線が日本株式に向いてしまって、外国の資産への投資という選択肢を考えていなかったな。でも長期で考えるとアメリカや世界経済は成長しているもんね。ただ、僕は外国の資産というと「為替が怖い」っていう印象があったんだよね。
たしかに、僕たち世代は若い時にプラザ合意後の急激な為替の変動を見ていたし、お互い仕事にも影響を受けたよね。もし外貨に投資していたら、自分の資産に影響があったんじゃないかって恐怖に感じることもあるかもしれない。そんな時は2つの視点で投資を考えてみるといいよ。

①為替変動リスクを抑えた投資手法で、外国資産に投資する。

②日本円しか持たないリスクを考えてみる。

①は為替ヘッジといって、為替の変動リスクを低減して、外国資産そのものの成長を取りたい時には有効だね。為替ヘッジが付いた投資信託もあるんだよ。②は例えば日本人が円預金だけを持っている場合、意識していないかもしれないけど日本円に100%投資しているとも考えられるよね。分散投資という観点で、日本円以外に投資することも考えてみたらどうだろう。

プラザ合意についてはコラム「1980年代ってどんな時代?(日本編)」で説明しています。

為替ヘッジの詳細についてはコラム「為替変動の影響は、なくならないの?」、「「為替ヘッジ」にはコストがかかるの?」で解説しています。

そういう考え方をしたことがなかったな。外貨を使うのは海外に行く時の話で、日本にいる時は日本円を使っているから、日本円を持っていれば大丈夫という意識が潜在的にあったのかもしれない。でも、確かに日本は高齢化で人口が減少傾向だし、「日本円を持っていれば安心だ」って考え方は偏っているのかもしれないね。
僕も米国株式の比率が高いけど世界株式などにも分散しているよ。それに株式以外の資産や外貨も持っているしね。
過去のシミュレーションから、時間や投資対象を変えることで投資効果が違うことが分かった!私もおじいちゃんたちからもらったお年玉やお祝いのお金を預金に置いているから、それを少しずつつみたて投資に回していこうかな。あとは大学生になったら、アルバイトもする予定だから、その一部を積み立てられるように計画的に使っていきたい。
若い時期は経験のためにお金を使うのも大事だけど、先に投資分を確保しておけば残りのお金で上手にやりくりできるし、お金の使い方も覚えていけるかもしれないね。
今話題のNISAも2024年から制度が変わって投資額の上限などが拡大したよね。これからは日本もアメリカのように制度が整って資産運用する人が増えていくかもしれないね。今は人生100年時代。これからインフレが続いても負けないように今ある資産をどう活用するか、僕自身も資産の置き場を考えてみるよ。

NISAの詳細はNISA特集ページよりご覧ください。

ありがとう。2人のおじいちゃんからいっぱい話を聞いて、資産運用についていろいろ知ることができたよ。まずは始めてみることが大事だね。私も大学生になるし、早速始めてみるね!