投資信託の基礎知識

投資マインドを育てるコラム “感情のワナ”にはまらない、賢い投資家へのステップ

「勝ち」を狙うより「負けない」意識にシフトする
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人は、素早い判断をするために、「ラベルを貼る」ということをします。公務員だと聞いただけで「マジメそう」とパッと思ったり、メガネをかけている人が知的に見えたりするのは、「公務員」や「メガネをかけた人」をざっくりと一つのグループとして捉え、「マジメ」、「知的」といったラベルを貼っているのです。

ラベルを貼ると安心しますし、ふさわしい対応ができる可能性も高くなります。ただし、一旦ラベルを貼ってしまうと、実際は違う性質を持っていたとしても、それに気づけなくなるという弊害が出てきます。

日本においては、「投資」というと「元本保証がない=危険」というラベルを貼っている人はまだまだ多いように感じます。その反動なのか、投資未経験者ほど大きな儲けをイメージして、「投資なんて危険なことをするからには、勝った時にドーンと儲からなければ意味がない」といった考え方をすることがあるようです。そのような考え方に基づくと、1~2%の収益しか期待できない資産に数万円を投資するなど、「何の意味があるのだろう」となるでしょう。

もちろん、投資信託にも値動きが大きい資産に投資する高リスク・高リターンのものはありますが、中リスク・中リターン、低リスク・低リターンのファンドも数多くあります。なぜ「ドーンと儲かる」訳ではないファンドを保有するのでしょうか。それを考えるために、下の表を見てみましょう。

【図1】
    運用開始 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
Aファンド 年間の騰落率   10% -10% 20% -20% 10%
資産価格 100.0万円 110.0万円 99.0万円 118.8万円 95.0万円 104.5万円
Bファンド 年間の騰落率   1% 2% 1% 2% 1%
資産価格 100.0万円 101.0万円 103.0万円 104.1万円 106.1万円 107.2万円

これは初年度に100万円を投資し、5年間にわたって毎年再投資を繰り返した結果をシミュレーションしたものです。Aファンドは10~20%の収益と損失を繰り返して、5年目に10%の収益を得て終わったとします。Bファンドは毎年1~2%の収益を出していたとします。

5年間運用した後、もしかしたらAファンドを持ち続けていた人は、「かなり変動したけれど、結局儲かったな」などとちょっと嬉しい気持ちになっているかもしれません。しかし運用結果を見てみると、年間の収益率としては低く見えるBファンドに投資していたほうが、好成績となっているのです。

ベテランのポートフォリオ・マネージャーに、長く運用者を続けていく秘訣を聞いたところ、「負けない運用をする。もし負けたとしても大きく負けない」という答えが返ってきました。これは長期的な資産形成に取り組む投資家にも同じことが言えると思います。

投資を考えた時に、短期間の儲けばかりに注目していると、長い目で見た資産形成の妨げとなることがあります。その資産の安定性はどうなのか、どのくらいの期間投資を続けていくのか、などにも目を向けていくことで、短期的には資産が増えた実感がないとしても、長期的には好ましい結果につなげることができます。

「勝つ」と考えるよりも、「負けない」という考え方で資産運用を見直してみるのもいいのではないでしょうか。

(参考)
友野典男(2006)「行動経済学」、光文社新書
マッテオ・モッテルリーニ(2008)「経済は感情で動く」、紀伊國屋書店 他