人生には、いくらお金がかかる?
ライフイベントから考える「これからのお金」の準備

結婚、子どもの教育費、住宅購入、退職後の暮らし。人生の節目には、楽しみや期待がある一方で、普段の生活費とは別にまとまったお金が必要になる場面があります。その金額は、数十万円で収まることもあれば、数百万円、場合によっては数千万円単位におよぶこともあります。大きな数字に見えるかもしれませんが、こうした支出の多くは突然やってくるものではありません。進学や住宅購入、退職後の暮らしのように、時期をある程度見通せるものも少なくないからです。
このコラムでは、人生の主なライフイベントにかかる費用を確認しながら、これからのお金をどのように準備していくかを考えていきましょう。
人生の節目には、まとまったお金が必要になる
人生でかかるお金は、人によって大きく異なります。結婚するか、子どもを持つか、住宅を購入するか、退職後にどのような暮らしを望むか。そうした選択によって、必要な金額も、お金がかかる時期も変わってきます。以下の図は、代表的なライフイベントにかかる費用の平均額をまとめたものです。
ライフイベントと費用
これらはあくまでも一例ですが、人生のさまざまな場面で大きな支出が発生することがわかります。なかでも、一般的に「人生の3大支出」といわれるのが、子どもの教育費、住宅購入費、老後の生活費です。いずれも金額が大きく、必要になったタイミングで一度に用意するには負担が重くなりがちです。だからこそ、「いつ必要になるお金なのか」を意識しながら、早めに備えておきたいところです。
教育費は「進路」によって大きく変わる
子どもの教育費は、進路によって差が出やすい支出です。幼稚園から高校までにかかる費用は、すべて公立の場合で合計596万円、すべて私立の場合で合計1,976万円が目安です。さらに大学に進学する場合、国立大学で243万円、私立文系で419万円、私立理系で567万円が目安となります。また、授業料だけでなく、習い事や学習塾、受験費用、一人暮らしをする場合の仕送りなどが加わると、家庭ごとの負担はさらに変わることでしょう。教育費は、子どもの成長に合わせて長期間にわたり支出が続く一方で、時期を見通しやすいお金でもあります。入学や進学のタイミングはある程度決まっているため、一度にすべてを用意しようとするのではなく、進学の節目を見据えて少しずつ準備していけば、将来の負担を一時期に集中させずに済みます。
教育費
住宅購入は、買う前よりも「買った後」まで考える
住宅購入は、人生で最も高価な買い物のひとつといわれます。購入価格の目安は、マンションが5,592万円、戸建てが3,826万円です。購入時には、頭金として自己資金をどのくらい準備するか、住宅ローンを利用する場合は、いくら借り入れるのか、何年かけて返済するのかといった資金計画が重要です。さらに購入後も管理費、修繕費、固定資産税、リフォーム費用などが発生します。長く住むほど避けて通れない支出です。毎月のローン返済額が無理のない範囲に見えても、こうした費用を加えると、家計の余裕が変わってくることもあります。購入時の費用だけでなく、「買った後も無理なく暮らせるか」まで含めて考える必要があるでしょう。
住宅購入費
セカンドライフは、思っている以上に長い
退職後の暮らしでは、毎月の生活を支えるお金が長く必要になってきます。夫婦ふたりの老後の最低日常生活費は月額24.1万円、ゆとりある老後生活費は月額39.0万円とされています。標準的な年金額が月額23.7万円とされていることを踏まえると、ゆとりある暮らしを想定する場合には、月額15.3万円ほどを別に補う計算になります。
ただ、この金額はそのまま誰にでも当てはまるものではありません。持ち家で暮らすのか、賃貸に住み続けるのか。退職後も働くのか、趣味や旅行をどのくらい楽しみたいのか。健康状態や家族との関わり方によっても、老後にかかるお金は変わります。平均額は、正解というより、自分の暮らしに置き換えて考えるためのものさしとして見ておくとよいでしょう。
ここで大きく関わってくるのが、退職後の期間の長さです。セカンドライフが20年、30年と続く前提で考えると、毎月の数万円の差も、長い時間の中では大きな違いになります。
退職後のお金は、「いくら貯められるか」だけでなく、「どのくらい使いたいか」から考えることもできます。住まい、健康、働き方、趣味や旅行。望む暮らしを思い描いてみると、毎月必要になりそうな金額や、まとまって使うお金のイメージも少しずつ見えてきます。そのうえで、どのくらい準備するのか、どのようなペースで使っていくのかを考えていく。退職後は、資産を積み上げるだけでなく、暮らしに合わせて使いながら支えるステージでもあります。
老後の生活費
将来のお金は、少しずつ準備できる
教育費、住宅費、老後資金など、人生の大きな支出は、金額だけを見ると負担が大きく感じられることがあります。ただ、必要になる時期に目を向けると、すぐに使うお金と、時間をかけて育てていくお金とでは、準備の仕方が変わってきます。
近い将来に使うお金は預貯金で持つ。使う時期まで余裕があるお金は、NISAやiDeCoなどを活用しながら準備する。投資である以上、値動きはありますが、長期・積立・分散の考え方を取り入れることで、時間を味方につける方法も選択肢になります。
NISA(ニーサ)とは、少額投資非課税制度の愛称です。通常、上場株式や投資信託などの金融商品に投資して得た利益(運用益)や受け取った配当金や分配金に対して、約20%の税金がかかります。一方で、NISA口座で一定の範囲内の金額で購入した金融商品は非課税で運用成果を受け取ることができます。
2026年6月末現在、20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%、住民税5%)。今後税法が改正された場合などには、税率などが変更される場合があります。
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金の愛称です。この制度では、加入者が自分の決めた額(掛金)を積み立てて自ら資産運用し、原則として60歳以降に運用成果を受け取ることができます。iDeCoで資産運用した場合、投資信託などへの投資で得た利益(運用益)が非課税となるだけではなく、自分で決めた掛金額が所得控除の対象となります。また、一部の例外を除き企業型DCとの併用も可能です。
運用資産には、別途、特別法人税が課されますが、現在、課税が停止されています。
平均額は、正解ではなく、自分の暮らしに置き換えて考えるための目安です。これから迎えるライフイベントを思い描きながら、「いつ、どのくらいのお金を使いそうか」を整理してみる。大きく見える将来のお金も、時期と目的に分けて考えることで、今できる準備に落とし込みやすくなるでしょう。
まずは、自分や家族のこれからの暮らしに照らし合わせながら、必要になりそうなお金を確認してみてはいかがでしょうか。