投資信託の基礎知識

投資マインドを育てるコラム “感情のワナ”にはまらない、賢い投資家へのステップ

“続く投資”をはじめよう
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これまで7回にわたって、人の感情と投資行動について考えてきました。偏った見方(バイアス)によって不合理な投資行動をしてしまうことを防ぐには、陥りやすいわなを知ることも大事ですが、一番の対策は、やはり十分な情報を得ることと、実際の体験を積み重ねていくことです。知識と経験を身につけることは、冷静な判断につながります。

突然ですが、みなさんは10年以上続けていることはあるでしょうか。ある方は日記を10年以上つけているかもしれません。毎朝、愛犬の散歩を欠かさない方もいるでしょう。語学の勉強、楽器やスポーツなどの練習を続けている方もいるでしょうし、仕事と答える方もいるでしょう。

何かを10年続けるというのは、本当に大変なことです。やる気を保つことは難しいですし、人生には様々な変化も訪れます。あらゆる障害を乗り越えて続けることができたということは、やはり「続く仕組み」があったのだと思います。

「続く仕組み」は、「行動が継続的に動機づけられている」と言い換えることができます。望ましい反応がすぐ確実に返ってくるようなことは、苦もなく続けることができます。例えば愛犬の散歩は、愛犬が喜ぶ姿をすぐ確実に見ることができ、毎回動機づけられるので、続けやすいのです。

一方、「健康のために禁煙する」といった行動は、望ましい結果が得られるとしても将来のことですし、確実に健康になるとも限りません。逆に「禁煙のストレスの方が体に悪い」などという説を耳にすれば、頑張っている意義が見いだせなくなります。

つまり、その行動から得られる望ましい結果が、「即時か/将来か」、「確実か/不確実か」によって、どの程度動機づけられるかが変わるのです。

その観点で考えると、投資も続けることが難しいことの一つです。「将来に備えて資産形成を」と言われれば、その通りだなと思うのでしょうが、結果が分かるのは将来ですし、投資に馴染みがない人にとっては確実に資産形成ができると思えないかもしれません。そもそも「長く続けたからといって成果が上がるわけでもない」と考える方もいるでしょう。

あやふやな動機づけの中では、行動を起こせなくても当たり前と言えます。ただし、投資に関して言えば、やはりできるだけ早くから触れていた方がいいのです。必要に迫られてから「さあ、やろう」と思っても、それから知識や経験を身につけるのでは、思うような資産形成は難しいでしょう。少しずつでも投資に触れていれば、それだけ選択肢が増えることになります。

また、数千万円の資産を1年で作ることができる人はあまりいませんが、数十年かければ多くの人が可能です。資産価格は上下しますから、好況と不況の両方を体験することも投資経験として重要です。景気の一巡りには10年程度は必要です。

動機づけが難しい行動を続けるには、いくつか方法があります。まず、行動にかかる負荷をぐっと下げてしまうことです。例えば、少額の積立投資を自動引落しで行なうのは、多額の投資を証券会社に出かけていって行なうよりも、ずっと負荷が小さくなります。よく「ベイビーステップ」などと呼ばれますが、最初の一歩をごく小さくすることで、始めやすく続けやすくするのです。

結果に対する確実性を上げるという方法もあります。書籍などを読んだり、専門家に話を聞いたりして、「このプロセスで行なえば上手くいきそう」といった方法を見つけ出せれば、行動を続けやすくなります。

投資というと、その場の投資判断に意識を取られがちですが、語学やスポーツを身につけるようなイメージで、続けること自体にも意識を向けてみましょう。何に投資をするかを考えるのと同じぐらい、続ける仕組みについて考えることは、「賢い投資家」への近道になるかもしれません。

(参考)
友野典男(2006)「行動経済学」、光文社新書
マッテオ・モッテルリーニ(2008)「経済は感情で動く」、紀伊國屋書店 他