暗号資産とは?~暗号資産の基礎~

2025年は特に、暗号資産を取り巻く環境に大きな変化があった年でした。皆さんのなかにも、ニュース等で暗号資産に関する話題を見聞きする機会が以前より増えた、と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本コラムでは、新たな投資対象として認識されはじめている暗号資産について、基礎的な内容をご説明します。

暗号資産の成り立ち

2008年、サトシ・ナカモトを名乗る人物がBitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash Systemビットコイン: P2P電子通貨システム)という論文を投稿しました。そこには、P2P(仲介役を通さずに参加者同士のパソコンやスマホが直接つながってデータをやり取りする仕組み)の技術を使った通貨のアイデアやブロックチェーン等について書かれており、その後、内容に興味を持った有志のエンジニア達によって開発がすすめられました。2009年、ブロックチェーン上に最初のブロック(genesis block)が形成され、暗号資産が誕生しました。ちなみに、ビットコイン初の取引は、2010年にラズロー・ハニエツというプログラマーがピザ2枚を10,000BTCで購入した時だと言われており、その日は「ビットコイン・ピザ・デー」という記念日になっています。

分散型の取引記録管理技術。インターネット上で複数のコンピューターが暗号技術に基づき、全ての取引記録を相互監視しながら情報を共有することで、取引記録の改ざんや消去を防ぐことができる仕組み

分散型の取引記録管理技術のイメージの図

(出所)経済産業省 (平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに関する国内外動向調査)報告書概要資料 平成28年4⽉28⽇ 商務情報政策局 情報経済課 より)

暗号資産の定義

暗号資産については様々な定義がありますが、日本では資金決済法第2条第14項において暗号資産は以下の性質を有する財産的価値と定義されています。

  1. ① 代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる
  2. ② 不特定の者を相手方として購入・売却を行うことができる
  3. ③ 電子的方法により記録され、電子情報処理組織を用いて移転することができる
  4. ④ 本邦通貨・外国通貨、通貨建資産、電子決済手段又は金商法において有価証券として扱われるトークン(いわゆるセキュリティトークン)ではない

当初は「仮想通貨(virtual currency)」「暗号通貨(crypto currency)」と呼ばれることが多くありました。近年はG20を筆頭に国際会議ではcrypto -assetsという表現が主流になりつつあることに加え、法定通貨と誤解される恐れから、日本でも2020年5月に施行された資金決済法の改正で国際標準である「暗号資産(crypto asset)」に変更されました。
主要国の中で、日本は早い段階から暗号資産に関する規制の整備を進めてきました。
2017年の資金決済法改正の施行以来、暗号資産の投機化や資産流出といった環境変化に応じて制度の見直しを重ねてきました。金融庁は2025年4月に暗号資産制度の検証をまとめたディスカッション・ペーパーを公表し、同年7月以降は審議会で制度の在り方が検討されました。その結果、暗号資産の特性を踏まえた金融商品としての規制整備を通じて利用者保護を強化する観点から根拠法を資金決済法から金融商品取引法へ変更、情報提供規制やインサイダー取引規制の創設等が報告されました。さらに、2026年度の税制改正大綱 には暗号資産取引による利益の課税方式の見直しが盛り込まれる等、2025年は日本における暗号資産を巡る環境が大きく変化した年となりました。

情報通信技術の発達や利用者ニーズの多様化等の資金決済システムをめぐる環境の変化に対応するため、①サーバ型前払式支払手段の規制対象化、②為替取引を銀行以外の一般事業者に認める資金移動業の創設、③銀行間の資金決済に関する制度整備としての資金清算業(免許制)の導入、を主な内容とする法律

さまざまな金融商品について開示制度、取扱業者に係る規制を定めることなどにより、国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することを目指した法律

では、暗号資産とは具体的にどのようなものなのでしょうか。

暗号資産の代表的な銘柄としては、ビットコインやイーサリアム等があげられます。

暗号資産にはこれ以外にもたくさんの種類がありますが、世界初の暗号資産である「ビットコイン」とビットコインの代替コインである「アルトコイン」の2つに大別されます。先ほど例にあげたイーサリアムは、アルトコインにあたります。

暗号資産は、日本円や米ドルといった法定通貨ではありません。法定通貨のように価値を支える裏付け資産や政府の保証がないため、市場の需給やニュース等によって価格が大きく動きやすい特徴があります。取引所等を通じて少額からいつでも売買でき、値上がり益を狙える一方で、急な値下がりにより短期間に損失が出る可能性があります。また、ハッキングや資産流出といったセキュリティリスク等もあります。また、オルタナティブ投資の一部として、リスク判断力・負担能力のある投資家による資産形成のための分散投資の対象にもなり得るとされていますが、常に分散効果が得られるとは限りません。暗号資産を利用する場合は、このような仕組みやリスクを理解したうえで判断することが大切です。

伝統的な投資対象である上場株式、債券等とは異なるリスク・リターン特性を持った代替的な投資手法の総称

イーサリアム(Ethereum)とは、ブロックチェーンを用いたプログラムが実行されるプラットフォームの名称。このプラットフォームで取引される仮想通貨がイーサ(Ether)。

暗号資産全体の市場規模

暗号資産全体の時価総額は、2020年3月末の19.4兆円から2025年3月末には400.0兆円まで増加しました。このうち、ビットコインに関しては2020年3月末の12.7兆円から2025年3月末には245.7兆円を占めており、価格も大きく値上がりしています。

時価総額

期間:2020年3月末~2025年3月末

時価総額の図

(出所)一般社団法人 日本暗号資産等取引業協会()「暗号資産取引についての年間報告 2019年度版~2024年度版」より野村アセットマネジメント資産運用研究所作成

ビットコイン(USD) 価格推移

期間:2020年1月末~2026年2月18日

ビットコイン(USD) 価格推移の図

(出所)Bloombergデータより野村アセットマネジメント資産運用研究所作成(2026年2月18日時点)

一方、国内ではどうでしょうか。

国内の取引状況

国内の現物取引は、2020年3月から2022年3月にかけて大幅に増加したのち、暗号資産交換業者大手の経営破綻等もあって10兆円程度に落ち込んだものの、2025年3月には再び増加しています。国内の設定口座数(注)も右肩上がりに増えており、暗号資産への関心は継続していると推察されます。

国内 現物取引金額

期間:2020年3月末~2025年3月末

国内 現物取引金額の図

(出所)一般社団法人 日本暗号資産等取引業協会()「暗号資産取引についての年間報告2019年度版~2024年度版」より野村アセットマネジメント資産運用研究所作成

国内 設定口座数

期間:2020年3月末~2025年3月末

国内 設定口座数の図

(注)設定口座数:口座開設手続きを終えて取引が可能な口座数。個人と法人の合計。

(出所)一般社団法人 日本暗号資産等取引業協会()「暗号資産取引についての年間報告2019年度版~2024年度版」より野村アセットマネジメント資産運用研究所作成

暗号資産の種類や特徴は多様であり、各国は法規制や税制を含めて異なる対応を進めています。ここでは米国の状況について見てみましょう。

米国の状況

米国では、2025年にトランプ氏が大統領に就任して以降、暗号資産を取り巻く状況が大きく変化しました。就任直後、トランプ大統領は暗号資産の利用促進を目的とする大統領令に署名し、その後も戦略的な暗号資産備蓄の検討や、確定拠出年金で暗号資産を含むオルタナティブ資産への投資が可能になるよう見直しを行う等、多数の関連政策を推進しています。規制に関しては、暗号資産推進派のポール・アトキンス氏が米証券取引委員会(SEC)の委員長に就任したことを契機に、これまでの方針が規制強化から規制緩和に転換されました。さらに7月には、米国議会下院で3つの主要法案―⽶国ステーブルコイン国家⾰新指導確⽴法案(GENIUS法案)、デジタル資産市場構造法案(CLARITY法案)、および反CBDC監視国家法案(Anti-CBDC法案)―が集中審議の後に可決されました。
このうちGENIUS法案は既に上院を通過していたため、下院可決後にトランプ大統領が署名し、成立しています。2021年にビットコイン先物ETF、2024年にビットコイン現物ETFが承認されたこと等を背景に投資家の裾野が拡大し、2025年にはこれまで暗号資産に慎重だった伝統的な金融機関も暗号資産ETFの提供やカストディ業務に本格的に参入し始めており、暗号資産は機関投資家や個人投資家にとって、より身近なものになりつつあります。

中央銀行が発行するデジタル通貨(Central Bank Digital Currency)

暗号資産を投資対象とする上場投資信託ETF(Exchange Traded Fund)

顧客の代わりに資産を保有・管理する業務

おわりに

米国や日本以外でも、暗号資産を取り巻く環境は変化しています。例えば、EUでは暗号資産市場規則(MiCA:The Markets in Crypto Assets Regulation)が2024年に完全施行、2025年にはデジタル・オペレーション・レジリエンス法(DORA)が適用開始される等、EU域内での統一的な規制の枠組みが整備されつつあります。2025年は規制の明確化と実務インフラへの統合が進み、暗号資産を制度・金融システムに組み込む方向性が世界的に一歩進んだ年といえるでしょう。

暗号資産は投資対象化が内外で進展している他、ポイントやゲーム内アイテム等で活用される等、今後ますます身近なものになっていくと考えられます。他方、暗号資産には様々なリスクがあるため、暗号資産のリスクや商品性を十分に理解し、リスクを許容できる範囲で合理的な判断に基づいて利用することが重要になるでしょう。

技術的な専門用語が多く、少し難しく感じられるかもしれませんが、「どんな仕組みなのか」「どんな場面で使われているのか」を押さえることは、投資における“商品理解=リスク管理”の第一歩です。暗号資産に対する理解を深めながら、自分のルールで向き合うことが、これからの時代への備えになるのではないでしょうか。