3.3つの寿命
なぜ今、資産運用が必要なの?

「3つの寿命」で考える老後資金
老後資金を考えるとき、多くの人が意識するのは「何歳まで生きるのか」ということではないでしょうか。
しかし、老後の暮らしを考えるうえで大切なのは、それだけではありません。
大切なのは、生命寿命、健康寿命、資産寿命の3つをあわせて考えることです。
生命寿命は「これからの人生が続いていく期間」、健康寿命は「健康で自立した生活ができる期間」、資産寿命は「貯蓄や金融資産が維持できる期間」を指します。
長生きすることは喜ばしい一方で、健康状態の変化や介護費用の発生、そして資産の取り崩しにも備える必要があります。この3つの寿命のバランスを意識することで、老後資金の準備で何に備えるべきかが見えやすくなります。
老後資金を考えるうえで意識したい「3つの寿命」
| 寿命 | 意味 | 意識したいこと |
|---|---|---|
| 生命寿命 | これからの人生が続いていく期間 | 長生きに備える必要がある |
| 健康寿命 | 健康で自立した生活ができる期間 | 医療・介護費が増える可能性がある |
| 資産寿命 | 貯蓄や金融資産が維持できる期間 | 資産が寿命より先に尽きない工夫が必要 |
生命寿命は、「平均寿命」ではなく「平均余命」で考える
厚生労働省の「簡易生命表(令和6年)」によると、日本人の平均寿命は男性81.09歳、女性は87.13歳です。ただし、老後資金を考えるときに、平均寿命だけを見て判断するのは十分といえません。注目したいのは、今の年齢からあと何年生きる可能性があるのかという点です。
その目安になるのが「平均余命」です。たとえば60歳時点の平均余命は、男性で約23.6年、女性で約28.9年となっています。つまり、60歳の人は平均的に見ると、男性は84歳ごろ、女性は89歳ごろまで生きる計算になります。さらに、将来を考えるうえでは、「平均」だけでなく、長生きする可能性にも目を向けておきたいところです。90歳まで生きる確率は男性で4人に1人、女性では2人に1人以上とされており、100歳まで生きることも、もはや特別なことではなくなりつつあります。
老後資金の準備では、「平均的にはこのくらい」と考えるだけでなく、想定より長生きした場合でも暮らしを維持できるかまで見込んでおく必要があります。
60歳の平均余命
90歳・100歳まで生きる確率
図表の数字は、四捨五入している場合があります。
(出所)厚生労働省「令和6年簡易生命表」(https://www.mhlw.go.jp/index.html)を基に野村アセットマネジメント作成
健康寿命を見据えると、生活費以外の支出も必要
老後に必要なお金は、毎月の生活費だけではありません。医療費や介護費用、住宅の修繕・リフォームなど、まとまった支出が発生することもあります。こうした費用に備えるうえで、ひとつの目安になるのが「健康寿命」です。厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」によると、健康寿命は男性72.57歳、女性75.45歳です。健康寿命とは、日常生活に制限のない期間の平均を指します。この年齢を過ぎるとすぐに介護が必要になるという意味ではありませんが、健康上の問題によって日常生活に制限が生じ、医療や介護の支えが必要になる可能性は高まっていきます。実際に、公益財団法人生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、介護に要する費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、住宅改造や介護ベッドの購入などの一時費用が平均47万円、月々の費用が平均9万円とされています。平均的な介護期間は55.0ヵ月であり、総額は約542万円にのぼり、介護期間が長期化するケースも少なくありません。老後資金を考えるときは、日常生活に制限が生じた後に必要となるお金まで視野に入れておくことが大切です。
(出所)厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」(https://www.mhlw.go.jp/)、公益財団法人生命保険文化センター 「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」(https://www.jili.or.jp/index.html)
(作成)野村アセットマネジメント
もっとも見通しを持ちにくいのは「資産寿命」
当社資産運用研究所「Investor Insights 2025(リタイアメント)」の調査では、生命寿命や健康寿命については全体の約7割が見通しを持つ一方、資産寿命については約5割にとどまりました。つまり多くの人が「何歳ごろまで生きそうか」「いつごろまで元気に暮らせそうか」はある程度イメージできていても、「お金が何歳まで持ちそうか」までは十分に把握できていないことがうかがえます。
年齢別にみると、50代では、生命寿命・健康寿命・資産寿命のいずれについても、「わからない」とする割合が相対的に高い傾向がみられます。退職後の生活が現実味を帯び始める一方で、年金、退職金、働き方、生活水準などの前提条件が固まり切っていないことが、その背景にあるのかもしれません。
また、「生命寿命が資産寿命より長い」と予想している人が44%、「同じぐらい」と回答した人が40%で、「資産寿命のほうが長い」と予想している人は16%にとどまりました。老後の安心感を考えるうえでは、生命寿命に対し、資産寿命をどれだけ確保できるかがポイントです。
3つの寿命について見通しを持っている人の割合
毎月の収支差は、長く続けば大きな差になる
老後資金を考えるときは、まず今ある資産で、老後の生活費をどれくらいの期間まかなえるのかを把握することが大切です。その目安になるのが、毎月の収支差です。
総務省統計局「家計調査結果(2025年)」によると、高齢夫婦無職世帯の平均的な消費支出は月額約26.6万円※1、公的年金などの社会保障給付は月額22.6万円※1で、収支差は月あたり約4.0万円となります。4.0万円という金額だけをみると、それほど大きく感じないかもしれません。しかし、この差が長く続けば、老後資金への影響は小さくありません。たとえば30年続けば、単純計算で約1,200万円になります。ただし、この4.0万円はすべての人に共通する「不足額」ではありません。老後の家計は、年金額や住居費、生活水準、働くかどうか、保有資産などによって大きく異なります。あくまでも、平均的な高齢夫婦無職世帯にみられる収支の一例と捉えるのがよいでしょう。こうした平均値を参考にしながら、自分の家計では毎月いくら不足するのか、今ある資産で何年くらいもつのかを確認していくことが重要です。そのうえで、たとえば退職金2,100万円※2をもとに、毎年48.0万円(4.0万円×12ヵ月)ずつ30年間取り崩した場合、現金のままでは30年後の残高は約660万円です。一方、年3%で運用しながら取り崩した場合は、約2,745万円となります。つまり、同じ金額を取り崩していても、資産運用を取り入れることで、資産寿命を延ばせる可能性があります。
退職金の取り崩しイメージ(平均的な生活の場合)
※1 総務省統計局「家計調査結果(2025年)」(https://www.stat.go.jp/)高齢夫婦無職世帯:夫65歳以上、妻60歳以上で構成する夫婦一組の無職世帯(月平均額/夫婦ふたり)
※2 厚生労働省「令和5年退職金、年金及び定年制事情調査」(https://www.mhlw.go.jp/)より、調査産業計・満勤勤続・大学卒・男性平均退職金額2,139万円(令和5年)を参考に、2,100万円と仮定。
シミュレーションの前提:上記データを基に2,100万円の退職金を毎年、年末に48.0万円ずつ取り崩したと仮定し、運用した場合としなかった場合の資産残高の推移を示しています。野村アセットマネジメントが算出したシミュレーションの結果であり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。算出過程で取引コスト等は考慮しておりません。
図表の数字は、四捨五入している場合があります。
(出所)総務省統計局「家計調査結果(2025年)」(https://www.stat.go.jp/)、厚生労働省「令和5年退職金、年金及び定年制事情調査」(https://www.mhlw.go.jp/)を基に野村アセットマネジメント作成
早いうちからの準備が、資産寿命を延ばす
以下のグラフは、実際に1984年12月末から2025年12月末までの期間に、8資産に分散投資した場合の保有期間別年率リターンの比較です。保有期間が長くなるほど、リターンのばらつきが小さくなっていることがわかります。
また、この期間では、8資産に分散投資して10年間保有した場合、最小のケースでも1.4%のリターンとなり、マイナスとなるケースはありませんでした。
8資産に分散投資した場合の保有期間別年率リターンの比較
(1984年12月末~2025年12月末)
〈保有期間1年間の場合〉
〈保有期間5年間の場合〉
〈保有期間10年間の場合〉
資産寿命を延ばすためには、時間を味方につけた長期・分散投資が有効です。こうした特徴からも、早いうちから備えを始めることが将来の安心につながるといえます。将来に向けた準備を進めるうえでは、生命寿命、健康寿命、資産寿命の3つをあわせて考えてみてはいかがでしょうか。
シミュレーションの前提:国内債券、国内株式、国内リート、外国債券、外国株式、外国リート、新興国債券、米国ハイ・イールド債券の8つの資産を1/8ずつの割合で、各資産の月間リターンを基に毎月リバランス(相場変動などにより変化した投資比率を調整し1/8ずつの割合を維持)を行なったものとして、野村アセットマネジメントが独自に計算したものです。ただし、1984年12月末~1989年7月末の値は、国内リート、外国リート、新興国債券、米国ハイ・イールド債券を除く4資産を1/4ずつの割合で、1989年8月末~1996年12月末の値は、国内リート、新興国債券、米国ハイ・イールド債券を除く5資産を1/5ずつの割合で、1997年1月末~2002年12月末の値は、国内リート、新興国債券を除く6資産を1/6ずつの割合で、2003年1月末~2003年3月末の値は、国内リートを除く7資産を1/7ずつの割合で計算しています。各資産の算出に用いた市場指数については、コラムの末尾をご参照ください。
例えば、2025年12月末の年率のリターンは、2025年12月末までに1年間保有した場合、5年間保有した場合、10年間保有した場合の年率換算したリターンを示しています。
税金・手数料などは考慮しておりません。グラフは過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。
(出所)ブルームバーグ等のデータを基に野村アセットマネジメント作成