MARKET REPORT マーケットレポート
【石黒英之のMarket Navi】米雇用統計を受けたテック株安をどうみるか?
2026年06月08日
ポイント① SOXが前営業日比10%超安に
米労働省が5日に発表した5月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比17.2万人増と市場予想の8.8万人増を大きく上回りました。3~4月分も計9.3万人分上方修正され、直近3ヵ月平均では18.8万人増と約2年ぶりの高い伸びとなりました。堅調な米雇用統計を受け、市場が予想する年内の米利上げ観測が強まり、5日の米国株式市場では半導体関連株で構成されるSOXが前営業日比10%超下落するなど、テック株を中心に急落しました。
もっとも、今回の米雇用統計がインフレ再燃を強く示唆する内容だったとは言い切れません。平均時給の伸び率は前年同月比3.4%増と4月の3.6%増から鈍化しており、長期の期待インフレ率も落ち着いています。米長期金利も直近のピーク水準を下回っているなど、金融環境の急速な悪化はみられません。
図1 S&P500種株価指数と
米VIX(ボラティリティ・インデックス)

・期間:2024年1月2日~2026年6月5日、日次
・米VIXとは米シカゴ・オプション取引所が、S&P500種株価指数を対象とするオプション取引の変動率を元に算出、公表している指数。一般的に同指数の数値が高いほど、投資家の先行き不透明感が強いとされる(別名:恐怖指数)
(出所)Bloombergより野村アセットマネジメント作成
ポイント② 業績拡大シナリオに変化はなし?
むしろ今回の株安は、これまで急ピッチで上昇してきたテック株に対する過熱感の修正の側面が強いと考えられます。投資家心理を示す米VIXは上昇したものの、近年のパニック局面と比べれば低水準にあります(図1)。短期的な値動きには注意が必要ですが、相場転換と判断するのは早計かもしれません。
市場の関心は金利動向に集まっていますが、重要なのは企業業績です。SOXの利益見通しは拡大が見込まれており、2年後の予想EPSから試算したSOXの水準は2万ポイント超となります(図2)。株価は中長期的には利益成長に収れんする傾向が強いことを踏まえると、AI(人工知能)需要の拡大を背景としたテック企業の成長シナリオに変化はないとみられ、今回の下落は一時的なものと考えています。
図2 SOX(フィラデルフィア半導体株指数)と
同12ヵ月先予想EPS(1株当たり利益)

期間:2016年1月8日~2026年6月5日、週次
・〇印は1年後、2年後の12ヵ月先予想EPS(2026年6月5日時点のBloomberg予想)
(出所)Bloombergより野村アセットマネジメント作成
*当資料は、一部個人の見解を含み、会社としての統一的見解ではないものもあります。