お知らせ
アメリカ中間選挙を受けた今後の市場動向について
2026年11月05日
<中間選挙の状況>
日本時間11月5日午前8時時点のAP通信の速報によると、上院は民主党54、共和党44(未確定2)、下院は民主党237、共和党147(未確定51)の議席を獲得した模様です。民主党が上下両院で過半数を上回り、大統領職と上下両院を共和党が支配する「トリプル・レッド」が崩れることが確定的となりました。中間選挙には大統領の所属政党が負けやすいという経験則があり、共和党の敗北自体は驚きではありません。ただし、今回、共和党はその経験則が示唆する以上に議席を失った可能性が高いと考えます。トランプ大統領は早々に敗北を認め、民主党に祝意を伝えました。
今回の結果はトランプ政権の政策実行能力を低下させるとみられますが、民主党の政策実現を容易にするわけでもありません。民主党が上下両院で法案を可決しても、大統領の拒否権に阻まれるためです。実際、トランプ大統領は「ミスター拒否権」になると述べており、民主党は拒否権を覆せるほどの大勝は収めていません。
新議会が発足する2027年1月3日以降、立法を伴う政策の実施ハードルは上がり、トランプ政権は大統領権限への依存を強めるでしょう。通商では追加関税のリスクが残ります。政権が通商法301条に基づき進めてきた過剰生産能力等の調査は、結果が未公表であり、新たな関税につながる可能性があります。
軍事面ではイラン攻撃の行方が注目されます。トランプ大統領は先月、「中間選挙まではイランを攻撃しない」と述べました。選挙前の原油価格安定を狙った可能性がありますが、選挙後の攻撃再開には注意が必要です。「西半球」重視の姿勢を踏まえると、中南米への制裁や軍事的威圧、治安維持等を目的とした軍事行動もリスクとなります。
一方、予算や債務上限引上げには議会の承認が欠かせません。最終的には超党派で成立するとみられますが、合意までに両党の対立が深まり、政府閉鎖や債務不履行のリスクが金融市場で意識されやすくなるでしょう。
<日本株式>
米国中間選挙は事前予想通り民主党優勢の結果となりました。11月4日の日本株市場は寄り付きから安く始まり、上院・下院ともに民主党が過半数を獲得する情勢が伝わると、AI半導体関連銘柄中心に株価は大きく下落し、日経平均株価は一時約3,000円安の60,030.10円のザラバ安値を付けました。共和党政権下で加速してきたAI半導体ビジネスが、民主党主導による政治運営に変わることで、データセンター建設への制約など事業の減速が懸念され、AI半導体関連銘柄が一段安となる展開となりました。
直近の日本株市場の調整を通じて、ハイパースケーラー(クラウドサービスを大規模に構築・運用する企業)による巨額設備投資の是非や資金回収リスク、AIクラウド企業の信用リスク等の悪材料については一定程度織り込まれてきたと考えています。一方で、このような状況においてもAIによる業務効率化の効果を否定するものはなく、よって中長期的なAI半導体ビジネスは拡大基調にあるとの認識は変えていません。民主党によるデータセンター規制の強化は懸念材料ですが、米国のAI分野における技術的優位性を維持する観点からは、産業の成長を阻害する規制には慎重な判断も求められるため、単純に規制強化が進むとは限らないと考えています。その意味でも昨日のザラバ中の大幅下落は過剰な反応とも言え、日経平均株価は大引けで62,000円台まで押し戻されています。
足元で進む2026年度の中間決算発表では、第1四半期に続き、好調な業績が確認されています。通期会社業績予想の上方修正が下方修正を大きく上回る内容であり、ファンダメンタルズに大きな懸念は確認されていません。加えて、なお途上との認識である株主還元強化、ガバナンス改善など日本のユニークな要因も継続すると考えており、この観点でも中長期的な日本株市場に対する見方は総じてポジティブという判断に変更はありません。また、AI半導体関連の影響が大きい韓国・台湾市場と比べ、日本ではそれ以外の幅広い業種でも堅調な業績が確認されており、収益基盤の広がりも強みと捉えています。当面は、AI半導体関連銘柄の株価動向、および中間選挙後のトランプ政権の運営状況を注視する必要はありますが、これら不透明な要素が織り込まれていけば、日本株市場の魅力の高さは再度見直されると考えています。
<外国株式>
11月4日のグローバル株式市場はMSCI All Country World 指数(配当込み、現地通貨ベース)で見て約1.3%の上昇となりました。米国中間選挙の開票が開始された11月4日のアジア時間中に、米民主党が上下院で過半数を確保する見通しとなり、トランプ米大統領が今回の選挙結果を受け入れる旨の報道が出たことなどから、午前中に下落していたアジア株式市場は午後から戻す展開となりました。また、ヨーロッパ市場はその流れを受けて上昇しました。米国の株式市場では、S&P500種株価指数が約1.6%の上昇となりました。同指数は10月6日に史上最高値を付けてから下落基調にあり、株式市場は米国中間選挙の結果を巡る不透明感を一定程度織り込んでいたとみられますが、昨日でその不透明感がいったん後退したと考えられます。
足元では、米国の大手AI関連企業による資金調達が相次ぎ、データセンターなどへの巨額投資が十分な収益につながるのか、投資家の間で懸念が広がったことで、AI関連銘柄は軟調に推移していました。また、今回の中間選挙では、州知事選を通じてデータセンター建設に対する規制の先行きが不透明となったこともAI投資への懸念を強めたとみられます。しかし、半導体関連企業や米大手テック企業の直近の企業業績を精査しますと、AI需要は強く投資の減速を示す兆候は見られておらず、AIは株式市場において複数年にわたる構造的な成長テーマであるとの見方に変更はありません。今後も規制面での不透明感が高まる状況においては、AI関連銘柄を中心に株式市場のボラティリティが高まる可能性もありますが、MSCI All Country World 指数で見た2027年の一株当たり利益の伸びは10月末時点で約17%、予想PER(株価収益率)は15倍程度となっていることからバリュエーション(投資価値評価)面でも投資妙味があると考えられる水準です。
また、今回の中間選挙の結果を受け、トランプ政権下で財政赤字の拡大につながる法案が成立する可能性は低下したとみられます。これにより、米金利への上昇圧力が和らげば、米国株式市場にとっては好材料になると考えられます。米国の政治動向は引き続き注視が必要ですが、力強い景気動向や企業業績などのファンダメンタルズ(基礎的諸条件)に投資家の関心が向かえば、米国を中心に株価は堅調に推移すると見込んでいます。
<債券・為替(米ドル円)>
米国10年国債利回りは、11月3日の終値4.96%から4日には4.89%まで低下(価格は上昇)しました。中間選挙の結果を受けて、トランプ大統領は共和党の敗北の原因がイランへの攻撃にあると述べました。米国とイランとの軍事衝突が終結に向かうとの期待が高まりながら、WTI原油先物価格が大きく下落したことで、インフレ懸念が後退し債券利回りも低下しました。加えて上下両院を民主党が掌握したことで、トランプ大統領が主張していたようなバラマキ的な財政支出が回避されるとの思惑も債券利回りの低下に寄与したと考えられます。
今後については、AI投資に支えられた底堅い経済成長を背景にFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げが続くことで米国の債券利回りには上昇圧力がかかりやすいと見ています。根強いインフレへの警戒も債券利回りを押し上げやすいと想定しております。ただし、実際に中東での戦闘が終結し原油価格の下落が続く場合には、インフレ懸念の弱まりから将来的にFRBが政策スタンスを変更する可能性には注意が必要です。また10月上旬以降、ハイテク株の下落と米国国債利回りの低下が同時に進んできました。民主党が議会を支配する中でAI関連投資のペースが減速するという懸念が強まる場合には、株式市場の下落とともに債券利回りが一段と低下する可能性もあります。
円は、昨日、米ドルに対して小幅に上昇しました。米国の債券利回りが大きめに低下し、主要通貨が米ドルに対して上昇する中で円も上昇しました。昨日はドル安が進行したものの、米国経済の強さやFRBの利上げによる相対的な高金利から、米ドルは上昇しやすいと想定しております。しかしながら、今回の中間選挙の結果を受けた米国政治の停滞によって、為替市場のトレンドが転換するリスクには留意が必要です。トランプ大統領が主張していたような大規模関税による経常収支赤字の縮小への道筋がより見通しづらくなることは、双子の赤字を背景に米ドルが円を含む主要通貨に対して基調として下落する要因になりえます。
また、為替市場の動向を見る上では、選挙を受けて米国の為替政策に変化が無いかも確認していく必要があります。米紙報道によると中間選挙結果を受けてトランプ大統領は政権人事を変更する計画は無いと述べました。ベッセント財務長官は留任すると想定されるものの、トランプ大統領が改めて米製造業の保護を睨んで、米ドル安を志向するような政策にシフトしないかには注意していく必要があります。
CIO 中山 貴裕
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